この学校の文化祭は、生徒のみ・一般公開二日の三日間ある。一日目は開会式やら校長などのいらない言葉やらで、結局は半日くらいしかない。そんななか、新しく導入されたクラス宣伝。
これで、余計にやる気を失くすんじゃないの?
「瑠璃、出番近いから移動してくれる?」
「はいはい、いってくるよ~…」
席から立ち上がって、ステージの脇に向かった。
冷達はもう来てたみたい。
「瑠璃、頑張って!」
「なみもやるんだよ?」
「私は演奏だから♪」
「羨ましい…」
『さぁ!次は学内一のモテ男!冷の登場だ!』
キャーと叫ぶ女子達の声が、もの凄くうるさい。耳痛いし…
「俺帰る。出たくない。」
「それはわかるけど;」
『冷ー!帰るならこっちにも策があるからなー?』
あ、大悟君が司会していたんだ。全く気がつかなかった。とゆうか聞こえてたの?!
ステージから大悟君がやってきて、舞台上に出るように言った。冷は渋々支持に従って舞台上に出る。
冷の姿が見えた瞬間に、女子からは黄色い声援。だから耳痛いっつの!
「策って何だよ…」
「まぁまぁ、聞けって。」
そう言って、冷に何か囁く。何を言ってるのか全く聞こえないけどね。冷が真っ青になったのは確認取れた。一体何言ったんだろうね?
健たちは聞こえたみたい。笑い堪えてるけどどうしたんだろう?
「おまっ!ふざけてんのか?!」
「全くふざけてませんが何か?さ!とっとと始めるぞ!」
「何の話?」
「いや!別に…」
焦ってるのバレバレなんだけど…まぁいいか。
宣伝は冷が言う。強制的に決め付けたんだけどね、冷が言えば女子は全員聞くから宣伝にはなるでしょ。
『んじゃ、一曲歌う。瑠璃、後はお前だろ?』
『冷も歌うんだよ。逃げるな。』
少し館内が静かになってから、なみがドラムスティックを叩いて演奏開始。

君の事なんて興味なかった  出来る事ならば関わりたくない

そう思っていた そうとしか思えなかった

嫌われ者の私 人気者の君 正反対だから


俺は君を見ていた 寂しそうな君を

いつも一人の君を 見つめていた

どんなに話し掛けて見ても 君は無視していた

けれど一度だけ 言葉を交わしてくれたんだ

「もう関わらないで」 「どうして?」
「君が嫌いなの」 「それだけなのか?」
「それだけ。」 「寂しくないのか?」
「一人がいいの 放っといて」

その一度きりの会話 それが最後

それから月日は流れる あれから話はしなかった

君はいつも通り一人だった 嫌われ者のまま

私は一人 この先もずっと一人でいる

悲しんでいるのかわからない
悲しみなんてわからない

君の事が気にかかる それ以外のことは頭に入らない

君のことを知りたい ただそれだけを考えていた

私は一人でいたかった 君の側にいると 色々あるから

君の取り巻きに 喧嘩売られる だから関わらないでほしかった

「俺と付き合わない?」 「黙って 関わらないでよ」

二回目の会話 それから暫く付きまとう

俺は君が好きだから ただそれだけの理由

他の子たちの視線が 私にとっては嫌なのに

俺が好きなのは勝手だろ? 私は嫌い。

俺が守る。 嘘ばっか いい加減にして。

そのまま嫌いでいたかった。

気付けばもう一人じゃなかった 隣にいつもいた

女なんてそこらかしらに居た 別に君じゃなくてもよかった

でも気付けば君だけ眼で追っていた 君だけを見つめていた

この先この思いは実るのかすら 俺にはわからない

今の自分の気持ちがわからない

自分の気持ちに気がつくのはいつになるのか

まだ私にはわからない
まだ俺にはわからない


歌が終って、暫くの沈黙。
まぁ、自分で歌っていても歌詞の意味が分からないもん。とにかく急いで作ったからね。
時間が無くて。
『え~と、俺らのクラスは喫茶店をやるんでよければ来てくれ。以上。』
沈黙が続く館内に冷の声がマイクを通して響いた。
私達は一礼をして、ステージから降りた。
その瞬間にもの凄い大きな歓声が上がった。体育館が揺れたように感じた。あれ?そんなに歓声を上げるような歌だったのかな?
「やったね瑠璃!大成功!」
「そうなのかなぁ?ほとんど冷のお陰じゃない?」
「そうか?瑠璃のお陰でもあると思うけど?」
んなわけない、とか思いつつ自分の席に戻る。
戻った時、クラスメイトたちは「よかったよ」とかの言葉だらけ。私にとってはどうでもいいこと。とにかく、歌いたくなかった。
こんな大勢の前うで歌いたくなかったのも本当だけど、それ以上に…理由があるから。
『以上!クラス宣伝は終わりま~す!最終日に宣伝投票の結果発表あるからねぇ~!協力よろしく☆』
随分と楽しんでるなぁ、大悟君。
司会とかもの凄く向いてるんじゃない?
『それじゃ、文化祭初日!30分後に放送で開始の音楽流すから聞き逃さないようにな。解散!』
解散だけはあっさりしてるし。
ぞろぞろと体育館から生徒達は教室へと向かい、開店準備を行なう。私達も着替えて仕事しなくちゃいけないし、教室に向かおうとした。
「ちょっといいですか?」
後ろから声をかけられたけど、私は聞き覚えがあるから無視する。
冷達は立ち止まって振り向いたけどね。
「その人に関わらない方が身のためだよ。放っときな。」
「でもるーちゃん…」
「放っといて死ぬわけじゃないし、別に平気だよ。」
「相変わらず、さばさばした性格ですね。」
「黙りなよ変態が。何であんたがここに居るの?さっさと帰りなよ、消え失せて二度と視界に入るな。」
こいつ、私は大っ嫌い。しつこいしうるさいから。
「まぁまぁ、そんな寂しい事言わないで。腕は鈍ってないみたいだしね。」
「瑠璃、こいつ誰?」
カイが問いかけてきたけど、返答はしたくなかった。というか、する必要ない様に感じたから。
でも、こいつが余計なこと言ったら最悪だから渋々言う。
「ある事務所の社長だよ。」
「基本的には声優専門の事務所だよ~。興味あるんだったら見学に…」
「キャッチセールスまがいの事しないでくれる?とっとと帰って。」
「事務所に戻って来ないか?」
「却下、もうやらないって言ったでしょ?何度も言わせないで。しつこいよ!」
「落ち着けよ瑠璃!殴りかかろうとするなっての!」
冷に両腕を掴まれたので、殴ろうとしたのに止められた。
これじゃぁ気がすまない、イライラしてなんかムカムカする。
「じゃぁ冷が代わりに受ける?」
ニッコリと笑いかけて言った。冷は少しづつ青ざめていく。掴んでいる腕の力が少し緩んだ。
「遠慮させて頂きます;手加減はしろよ?」
「考えておくよ。」
冷が腕を放してくれたから、ゆっくりと近づいて。胸倉を掴んだ。
「もう一度言っとく。もう来ないで。」
「…却下♪」
「よし、歯を食いしばってくれる?そうしないと歯が折れちゃうかもしんないからね☆」
短い悲鳴が聞こえて、お構い無しに巴投げを食らわせた。
胸倉掴んだとしたらこれが一番だね、簡単だし丁度いい☆
腰をさすりつつ、話を勝手に進めようとしている。
だから人の話し聞けっつの。
「あいつらも十分反省してるんだから、戻ってきてくれよ。」
「反省して許されるような事なのかな?それに、今まであいつらが何してきたかあんたは知ってるでしょ?それ以前の問題、あんたは私が事務所にいた時何もしなかったじゃん。あんたも前でやられていても、あんたは何も言わないで見て見ぬ振りした。黙認していたんでしょ?そんな最低な社長が収めている事務所なんかには戻りたくもないし、近寄りたくもない。帰って!」
あそこにいた時の事なんて何も思い出したくもない。そんな記憶すら呼び起こしたくもない。
「でも…「帰ってよ!もう来ないで!」…」
「瑠璃落ち着け。」
「帰れ!二度と来ないで!」
「落ち着いて瑠璃!」
冷達に落ち着くように言われたけど、それ所じゃなかった。嫌でも思い出しそうになったから、こいつに叫ぶしかなかった。こいつが来なければ何も思い出すことはなかったのに…
全部こいつが悪いんだよ!
何もかもこいつのせいで私の居場所が無くなったのと同じだよ!
「帰ってくれないかしら?そしてるーちゃんの元に、二度と現れないでくれる?」
「これ以上瑠璃を苦しめるんだったら、俺らが許さないから。」
「かな…カイ…」
冷に落ち着けと言われて、抱きしめられた。
抱きしめられて、少しずつ落ち着いた。抱きしめられている私の前に、冷とかなが壁になる様に立って言う。私と冷の隣にはなみと健、大悟君が立っていた。
私以外の六人はあいつを睨みつけていた。
「わかった、諦めるよ。でも、流石に緊急事態とかになったら協力はしてくれるか?」
「…あいつらが居ないのと、冷達が一緒ならやる。その二つが条件として満たされないなら、絶対にやらない。」
「わかった。じゃぁな。」
ひらひらと手を振って、体育館から出て行った。館内に残っているのは私たち七人だけ。後数分で開始時刻になるけど、動きたくはなかった。動けないと言う方が早いかも。
「大丈夫か?」
「無理…動けない。立ってるのがやっと…」
実際立っているのもしんどい。膝がガクガクしてる。
「その前に、冷と離れない?」
「「あ…」」
「自然すぎて違和感もなかったかしら?」
「うん…」
冷に支えられながら教室に戻った。
教室に入るなり、クラスメイト達に囲まれた。
「お疲れ!凄く良かった!」
「感動しちゃった!」
「あはは、ありがとう。」
軽く交わしつつ、制服に着替えて文化祭は始まった。
私達のクラスは、宣伝のおかげか大盛況中♪
とゆうか、大・繁・盛なり!!
「瑠璃たちお疲れー!交代の時間だよー!」
「んじゃ後お願いねー。」
交代して私達は文化祭を回る。
「どこいく?」
「まず腹ごしらえが初めじゃね?」
「同感、てか俺朝飯食ってねぇ…」
そう言って冷は寄りかかってきた。朝ごはん食べてないんかい!てか重くて倒れそう…
なみ達は寄りかかってる冷を見て、ニヤニヤしてた。
「ちょっと冷!重いから離れて!」
「嫌だね。」
「そんなはっきりと?!」
「まぁまぁ、冷にも事情があるんだからさ。大目に見ておこうよ☆」
「絶対面白がってるよね?!」
「「「「ばれた?」」」」
「4人ともはもらないでよ!」
「腹減った…」
笑う4人に対して、冷はとにかくお腹空いてるみたいで寄りかかるのをやめて後ろから抱きつく。転ばないように踏ん張るので精一杯な私。
だから誰か止めてっての!!
「ほら冷、お腹空いたなら何か食べ物買いに行こうよ。かな達もニヤニヤしてないで行こうよ。」
「えぇ、面白いのに?」
「面白がらないで!楽しもうよ。」
「それじゃ、2-3にいこっか。確か喫茶店じゃなかった?」
「んじゃ、さっさといこうぜ。」
隣のクラスだし、このまま冷を引きずっていく方が早いし…抱きついたままの冷をそのまま引きずって2-3に向かった。