何だかんだで文化祭前日。
結局歌う事になったから、冷たちを巻き込んだ。
「何で俺まで?!」
とか、ふざけた事を抜かす冷にはみぞおちを一発くらわせて。
「元はといえば誰の責任だっけ?文句言ってねぇででろ。いい?」
とか言っとけば大抵大人しくなるのは知ってるからね。
健となみも協力してくれるから助かる。
健はギター出来るし、なみはドラムが出来る。かなとカイは衣装作るって張り切っていた。冷はベースが出来るしカイはキーボードやるって言ってた。

「「できたぁ!」」
かなとカイは教室に入るなり叫んでいた。
出来たという事は衣装が完成したんだろうね。教室じゃなくて、別の部屋で作ってたし。
「手直しするかもしれないし、今から着てきて!」
かなは一人一人に衣装を渡して、着替えてくるように言った。
なんだか嫌な予感がするのは気のせいなのかなぁ?
「瑠璃、着替えよ?」
「うん。」
隣の準備室で私達は着替えた。

着替え終わって教室に戻ると、クラスメイト達から歓声。
それもそのはず、たったの二日でここまで作れるんだから凄いよ。
なみと私は、色違いのミニスカート。
上はブラウスなんだけど、襟元には二本のラインが入っていてネクタイにはなんか金の糸で刺繍が入っていた。
私はエメラルドグリーンの色で、なみは薄い藍色。
スカートもその色で、白いチェックが入っていた。
黒いニーハイソックスなのは多分、かなの趣味なんだろうけどね。
健・カイ・冷は、ワイシャツの襟元に、一本のラインが入っている。ネクタイと刺繍は私達と同じ。
後はズボンは制服だから何も変わってない。
ネクタイと襟元の色は、健・カイはなみと同じ色。冷は私と同じ色だった。
「男子のって手抜き過ぎないか?」
「制服のズボンに合わせたからな。それに野郎共のなんてこれで十分だ。」
「なみとるーちゃん可愛いでしょ?!これのデザイン私なんだから!」
「因みに、ブラウスとかのデザインは俺だし?」
「「うわっ、キモ!!」」
「冷と健酷くね?!」
争ってる男子どもは放っとこう。
でも二日でここまで行くのは本当に凄い。相変わらず、衣装とかの腕は凄いな。流石実家がデザイナーのだけはあるね。
「ありがとう、かな・カイ。明日頑張る。」
「えぇ、頑張って頂戴!」
パンッとかなと手を合わせた。いつも何かを頑張る時はこうするから。

=放課後=
私は屋上に来てた。
明日、上手くいけるか不安だったから。
「不安なのか?」
「冷…そりゃ不安に決まってるじゃん。」
いつの間にか後ろに居た冷。
不安か…そうかも知れないね。
「大丈夫だっての。俺もちゃんと歌うし。」
「歌うの?」
「まぁな、歌えって言われた。」
「なら冷だけが歌えばいいのに…」
「俺は瑠璃の歌声を聞きたいんだって。」
「意味分からない。」
フェンス越しに下を見る。
文化祭の看板を校門に立てている生徒会。
校庭にはいくつかの屋台があって、その屋台の看板とか作っている生徒達が小さいけど見えた。
「わからないか…あの時歌っていたのって、中学ん時のだろ?」
「何で知ってるのさ!」
「聞いたことあるから。」
聞いたことある?どういうこと?
だって歌うのは決まって屋上で、誰も居ない時に歌ってたのに…
「瑠璃と会う一年前だから、二年ごろか?その時一時期俺も荒れてたからなぁ。屋上でサボってたら歌声が聞こえた。」
「全く気付かなかった。」
「そりゃそうだ。」
「コノヤロー。」
冷に話した私がバカだった。
というか、荒れてたとか知らなかったな。そんな噂自体聞いたこと無かった。
女ったらしとか聞いたことはあるけど、それ以外のことは聞いたこと無い。
まぁ、興味自体無かったからしょうがないとは思うけどね。
「というか俺一回だけ瑠璃と喧嘩した事あんだけど、覚えてる?」
「まったく。二年でしょ?喧嘩売られたら買いまくってたし、潰した相手のことなんていちいち覚えていられない。」
そういえば、一回変な奴いたな。なんだか知らないけどいきなり殴りかかってきた奴が居た様な…居なかったような…
「女だから簡単にいけると思ったんだけど、一発で潰された。」
「あ、やっぱあってた?あれって冷だったの?いきなり殴りかかってきたのはいいけど、そんなに強くなかった。」
「そうそう、あれ俺。」
サラッと言うなよサラッと…
そこまで強くなくてそれ自体覚えて無かったよ。
「そう。まぁいいや。」
「明日、俺も一緒に歌うから頑張ろうぜ。」
軽く肩を叩いて、冷は屋上から出て行った。
まぁ、今更足搔いてもしかたないからね。
ここまで来たらやるしかないし、諦めて頑張ろう。