久しぶりに見る、瑠璃の笑顔に少し安心した。
ここ最近瑠璃の顔自体を見てなかったからね…

ただ、今一番聞きたいことは一つだけ…
あそこにいるのは本当に瑠璃なの?


「さぁ、どんな風に苦しめてあげましょうか?」
「あのっ、本当に俺が悪かったからもう止めてください!」
「それだけで私が許すとでも思ったの?ふざけた事抜かしてる暇があんの?」
「本当にすみませんでしたぁ!!」
「1パターンしかないのかなぁ?あぁ、そっかぁしかたないよねぇ~?だってバカなんだもんね。」

神様、瑠璃の性格を戻してください。
高校に入ってすぐの性格へ…
今の瑠璃は怖いです。

「これ以上怖いと泣くよ?!」
「泣き叫んでくたばっとけ。」
「すんませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「カイ?」
「はい!!」
「ウザイ。」
「そんな笑顔でさらっと言わないでぇ!!」
「うるさい。」
「はい…」
笑顔なのに怖い、こんな瑠璃初めて見たかもしれない。
隣にいる健は、顔が真っ青だった。
大丈夫かな?
冷は少し肩を震わせていた、とゆうか笑っていた。一生懸命に笑いを堪えてるんだろうけど、
耐え切れてませんよ?
「飽きたね、かな…」
「そうねぇ、なんか飽きたわ。」
「うっしゃ!」
「「喜んでるんじゃねぇよ?」」
「すみません。」
カイ謝ってばっかりだよ?!
息ピッタリ過ぎるよ?!
私は冷の元へ行って聞いた。
「冷、瑠璃ってこんな性格だったの?」
「あぁ、これはまだ良い方だぞ?もっと酷いは、さっきみたいに投げられる。」

酷いと投げるって何?!何で投げるの?!
「でも、丸くなったな。」
そう言う冷の表情は穏やかだった。
丸くなったって何?
不良だったのはさっき知ったし。
アレじゃまだ丸いってことは、どんだけ酷かったっの?!
「中学の頃にさ、聞いた事無いか?」
「何を?」
「”惨殺の桜姫”って名前。」
「あ、俺聞いた事あるぜ?」
あ、いつの間に来ていたんだ。
健がいつの間にか、隣にいて話に入ってきた。
「私は無いなぁ…それがどうかしたの?」
「その名前、不良の頃の瑠璃の通り名だぜ。由来が、”春になっていきなり表れた一人の女は、大勢の不良を一人で武器も持たずに勝利した時に付いた返り血が凄くて、桜の木の下で大勢の不良を倒した。"って意味らしい。瑠璃が喧嘩してる場所が決まって桜の木の下だからって意味もあるらしいけどな。」
思い出した、一回だけ見たことある。
中学の頃に一度だけ瑠璃に会ってるんだ。


+**+**+**+**+
「お母さんってば、カレーなのになんでルーを買い忘れるのかなぁ?」
早く家に帰って宿題しなくちゃね。

ちょうど通りかかった公園から、何やら音が聞こえたから少し覗いたら喧嘩してる人たちがいた。

春だから桜が綺麗で、風も吹いていて桜吹雪みたいな感じの中で喧嘩していた。

「かかれぇぇぇ!!」
一人の男が叫ぶと、一斉にかかる10数人くらいの男達。
その中心にいたのは長い髪の女の子だった。
女の子一人に10数人の男でかかるなんて、すっごく最低だと思った。
でも、そんなの考えるよりも先に私は危険だと思った。
だって彼女は一人なんだもん。
でもその心配はあっさりと打ち砕かれた。
踊ってるみたいに綺麗に攻撃をかわして、一発で男達を倒していく姿に魅了されていた。

10数人の男達を倒した子は、桜をずっと見ていた。
その姿を私は見ていたけど、異変に気づいた。
後ろで倒れてる男の一人が、何かを持ってゆっくりと立ち上がった。
月の光で照らされて一瞬光ったのは刃物だった。
「危ない!!後ろーーー!!!」
私は思いっきり叫んだ、自分が危険にさらされるかもしれないとかそんなの気にしてる暇じゃなかった。
とにかく叫んだ。
その声に気づいたから、間一髪その子は怪我しなかった。
刃物を持ってた男は急所を蹴られて一発K.Oをくらって立たなかった。
良かった、怪我しなくて…

そんなことを思ってたら、女の子が近づいてきた。
「ねぇ、何で叫んだの?」
「へ?」
「だって普通叫ばないよ、自分に危害加わると思うじゃん。逃げればよかったのに。」
「だって、桜…」
「は?」
「桜の事、ずっと見上げていたから…それに卑怯じゃない!」
「なにが?」
「喧嘩に刃物なんて卑怯すぎるよ!貴方は何も持ってないのに!」
「っ…あはははは!!!」
いきなり笑い出すなんて変な子、何か変なこと言ったかな?
「何で笑うのよぉ…」
「ごめんごめん、だって喧嘩に卑怯だとか言う子いないもんだからついね…」
「そうかなぁ?」
「そうだよ、てゆうか怖くないの?」
「何が?」
「俺が。不良なんて皆近づいたら逃げんのに。」
「だって分かるの。」
「何が?なんかあんの?」
「桜を見て、優しそうな顔してる人には悪い人なんかいないって私はそう信じてるの。お父さんが言ってたんだ。桜は人の心を映し出すって。」
「へぇ~、そんな解釈もあるんだ。」
「帰らないの?」
「帰るよ、父さんたちが心配するから。」
「夜桜もいいもんだね。すっごく綺麗。」
「あぁ、今日は満月だし空気も澄んでる。絶交の夜桜日和だ。」
「ね…」
しばらくベンチで二人座って、桜を見上げていた。

あれ?何か忘れているような気がする…
って…
「あぁ!」
「うわっ!」
「買い出しに来てるんだった…」
「急いで帰れよ;」
「あう~…怒られちゃう…」
「こっから近いのか?」
「歩きであと20分位かな?」
「はぁ~…送ってやるよ。自転車の後ろに乗れ。」
「ありがとう。」

つい女の子なのに、惚れそうになった。
この子に家まで送ってもらったから、何とか怒られなさそう。

「ありがとう、送ってくれて。」
「いや、助けてもらったしこれ位いいよ。」
「そう?本当にありがとう。」
「いいっての、んじゃな。」

自転車に跨って漕ぎ出そうとしたのを見て、私は思わず服の裾を掴んだ。

「何?」
「良かったら名前教えてくれない?」
「あ~…似合わないからヤダ。」
「なんで?」
「とにかく嫌だ。それは勘弁してくれ。」
「私、なみって言うの。それだけは覚えておいて?」
「忘れなかったらな。」
覚えててくれないかな?それ位;;
「杉原…」
「え?」
「杉原瑠璃、俺の名前。」
「瑠璃…綺麗な名前。」
「サンキュ、じゃぁな。」
「ありがとー!」
片手を振って、瑠璃は闇の中へと消えた。


+**+**+**+**+**+

あの時にはもう瑠璃と出会ってたんだ。
すっかり忘れてた。
忘れないでって言った私が忘れてたのね…

「瑠璃!ごめんね!」
「うわっ!!何々?!」
「忘れないでって言った私が忘れててごめんなさい…ごめんね…」
瑠璃に抱きついて謝る私に瑠璃は少し驚いてたけど、頭を撫でてくれた。
「”桜は人の心を映し出す”って言ってたよね。」
「覚えてたんだね…」
「あんな夜中に喧嘩してる奴ら見てて、逃げない奴っているんだって思いながら喧嘩してたし?まさか最後までいると思わなかったけど;私の顔見て逃げない奴も珍しかったけどね。それで覚えていた。」

瑠璃はちゃんと覚えててくれた。
それなのに私は…

「ごめんね、嫌いなんかじゃないから。本当にごめんなさい…」
「もういいっての、泣き止みなよ;」
「だってぇ~…」
「あいつの視線が半端なく痛いから、本当に一回はなれて;」

視線が痛い?
「なみは俺のだぁぁ!!泣かしてんじゃねぇ!」

あぁ、そうゆう事ね;
「健うるさいわよ?」
「うっ…」
「なみには勝てないんだ。」
「ううっ…」

良かった、瑠璃が戻ってくれて…