「瑠璃?!」

廊下から大悟の声が聞こえて、俺は教室を出た。
野次馬どもの中心にいたのは、大悟と瑠璃だった。
けれど瑠璃は、横に倒れていた。
「大悟、何があったんだ?てかなんで瑠璃がここに…」
「朝から来てたんだよ。けど、冷たちを見て多分屋上に行ってたんだと思う。それで……――」

大悟から俺は事情を聞いて驚いた。
教室の話を、聞かれてたってことを…
瑠璃が不良だって言われて、瑠璃の様子が変わったと。
そして瑠璃の母親が倒れたと…

「そうか、とりあえず瑠璃を保健室に連れてくか。」
「おぉ、で?話は終わったのか?」
「まぁな、後はかなたちがいるから平気だろう。」
「了解っとんじゃ…「おい。」ん?」
「瑠璃に触るんじゃねぇよ。」
「へいへいっと。」

瑠璃を抱きかかえて、俺と大悟は保健室へと向かった。
一度に嫌な事が重なって、冷静でいられなくなったんだろうな…
こんな時に言うなんて酷いだろうけど、意識失ってんじゃねぇよバカ瑠璃。

「大悟、俺今から病院に行ってくるわ。」
「あぁ、起きたら連絡入れるよ。」
「サンキュー。」

瑠璃は大悟に頼んで、俺は瑠璃の母親が運ばれたって聞いた病院へと走って向かった。

「クッソ、足痛ぇ…」
捻挫したところが痛くて早く走れねぇ。
急いでる時に限って痛むんじゃねぇよ!
とか思った矢先、信号が変わって俺は立ち止まった。

キッと俺の前に一台のバイクが止まった。

「冷、早く乗りなさい!」
「姉貴?!」
「早く!」

ズボッと無理やり俺はヘルメットを被らされた。
バイクの後部座席に跨って、姉貴はバイクを走らせた。

「瑠璃ちゃんのお母さんの話し聞いたわ。急ぐんでしょ?」
「誰から聞いたんだ?」
「大悟君よ、着信入ってて掛け直したのよ。勤務中だったけどすぐに許可出たわ。」
「そっか、ありがとな姉貴。助かったよ。」
「この貸しはちゃんと返してもらうわ。それでいいわね?」
「うぇ~…わかったよ。」
「文句言うならここで捨てるわよ?さ、着いたわ!」

バイクを止める姉貴にヘルメットを渡して、俺は先に行った。

看護婦に居場所を聞いて、俺は病室に入った。
ベッドには呼吸器をつけた瑠璃の母親。
所々には、包帯やガーゼが巻かれていたりしていた。

「あら?どなた?」
「あっ、俺瑠璃の同級生のものです。瑠璃が電話を受け取って意識を失ったので変わりに来させて頂きました。」
「瑠璃ちゃん倒れちゃったのね。彼女、少し貧血気味みたいで、体調を崩していたのよ…それで、棚が倒れて彼女は下敷きになってしまったの。」
「そうですか…」
「幸い命に別状は無いわ。数日で目を覚ますそうよ。」
「はい、瑠璃に伝えておきます。それでは。」

俺は病室から出て、姉貴の元へと戻った。
「どうだった?」
「命に別状は無いってさ、数日で目を覚ますって。」
「良かった、てゆうかあんたの携帯鳴ってない?」
「マジだ、はい…」
≪冷!今すぐ戻って来い!≫
「どうしたんだよ、瑠璃は起きたのか?」
≪起きたけど様子が可笑しいんだよ!早く戻って来いよ!?いいな!≫
「はぁ?」
ぶちギリやがったあのやろう…
「姉貴、学校まで送ってくれよ。」
「えぇ~…「ショートケーキとマカロンでどうだ?」受けるわ。作りなさいよ?」
「了承。」

俺は姉貴に学校まで送ってもらって、急いで保健室へと向かった。

「大悟、何があったんだよ。」
「それが…」
「あ?何あんたそんな格好してるの?てかここ何処なんだよ。」

……明らかに今までの瑠璃と違う、しいて言えば中学ん頃に瑠璃みたいだ。
「なぁ瑠璃、今の自分の年齢は?」
「何気安く名前で呼んでんだよ鈴木、一回死んで来い。」
「いいから、いくつだ?」
「15、それが何?」
「今のお前の家系は?」
「はぁ?父さんと母さんの三人暮らしだけど?」

やっぱりな、ここにいるのは中学の頃の瑠璃だ。
俺がまだ瑠璃と会ってない頃のな…

「瑠璃、俺の後について来いよ。」
「はぁ?!何であんたのいう事なんか聞かなきゃいけないんだっての!」
「いいから来い!」

俺は瑠璃の手首を掴んで教室へと向かった。
教室の周りにはいまだに野次馬がいるけど、気にしなかった。

「る~ちゃん!来たのね!?」
「かなにカイ?何でここにいんの?」
「瑠璃?何言ってんだ?」
「瑠璃、あの…こないだは本当にごめんね。」
「誰あんた、気安く話しかけてくんじゃねぇよ。」
「瑠璃、本当にどうしたんだ?」
「気安く話しかけんなってのが聞こえない?ウザイんだよ。」

あ~、本当に中学ん時の瑠璃だ…
これやばいわw

「冷、瑠璃どうしたんだよ。」
「あぁ、なんか意識失って目を覚ましたら中学ん時に記憶が戻ってる。」
「ウゲッ、まじで?」

顔を引きつらせるカイに俺は少し笑った。
にしても何かまずいんか?
「何かまずいのか?」
「俺ちょっと逃げるから!!」
「待ちなさいよカイ。瑠璃に謝りなさい?」
「どういう意味?」
「まぁまぁ、久しぶりにカイをいじりましょう?」
「意味わからねぇがいいよ、何する?」

意味わかんねぇのにするなよ!!
「待て待て!意味わかんねぇのにやるなっての瑠璃!」
俺は瑠璃の腕を掴んで、瑠璃を止めた。
その瞬間、俺は宙に浮かんで瑠璃に投げ飛ばされた。
やっべ、久しぶりにやられっと痛ぇ…
背骨がゴキッていった…
「気安く触ってくんじゃねぇよ、あとお前なんかに呼び捨てにされたくは無い。」
「何でだよ!」
「ウザイから、この女ったらしがなんでモテんのかなんて理解できないね。」
「たらしじゃねぇ!」
「へぇ~、嫌でも情報は来るよ?」
「どんなだよ!」
「あ?保健室に連れ込んで泣かせたと思えばその次は美術部の子を二人まとめて泣かせたとか?」
「うわっ!冷最低!」
「信じるんじゃねぇよ!大悟ぉ!」
悪乗りして大悟が最低とか言い出す。
あ~、早く戻ってくれよ瑠璃…
ここまで言われると心が折れそうだ…