冷が帰って、空もその後すぐに帰った。
帰り際に空は一言言った。
「これ以上冷に八つ当たりすんじゃねぇぞ」ってさ。
その言葉を言った時の空の顔が、あまりにもキモ過ぎて背中を蹴った。
痛いとか言う割には、何だか嬉しそうだった。
ベッドに寝っ転がって、ボケッとしてた。
あんなに拒絶したのに何で関わるのかすら理解できないよ。
いじめの主犯を捕まえるとか言ってたけど、そんなことできるのかな?
それに、そんなことされても行く気なんてあんまり起こらなかった。
けれど行かないわけにも行かず、明日は行こうと思う。

―朝―
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
お母さんに見送られながら私は、学校へ向かった。
でも何だか、教室に入る気は起こらなくて屋上へ向かった。
屋上へ向かう途中に、冷達を遠目から見つけた。
見つからないようにその場からすばやく逃げた。

―屋上―
「ここにいれば、何とでもなるか。」
少し眠くなって、私はここで睡眠をとった。

+*+*+*+*+*+*
「この問題分かるか?」
「あ?この公式使うんじゃなかったっけ?」
「そこはあってる、だがな…掛け算間違ってんじゃねぇよ!!」
「怒鳴ること無くね?!」

懐かしい、中学の時の記憶だ。
てことはこれは夢?って、それしかないか。
何で冷が教えてくれるのかなんて考えはしなかったなぁ。

「だから!!掛け算なんぞ間違えんじゃねぇよ!」
「分かるかそんなもんがぁぁ!!」
「小学校からやり直しやがれ!!」
「できるのならやってるわぼけぇぇ!!」

いっつもこんな感じで喧嘩してたんだっけ。
本当に懐かしいな、今思うと性格悪いなぁ私。
まぁ、荒れてたんだから当たり前か…


+*+*+*+*+*+*
「んっ…」
「お、起きたか?教室行こうぜ。」
「大悟君?何時の間にいたの?」
「今来た、教室が面白いことになってんぞ。」
「何で?」
「いいからいいから。」
大悟に背中を押されて、私は屋上から教室へと向かった。
教室の周りには人だかりができていて、教室自体が見えなかった。

「大悟、これ何?」
「あぁ、これの正体は冷たちだ。」
「はい?」
「実は…「っ…あんな奴の何がいいのよ!知ってる?!あの子中学の時は不良だったのよ?!」は?」
何?何の話してるの?
この学校には知ってる人なんていない筈。
知ってるのは冷しかいないのに。
なんで?
「嫌だ…」
「瑠璃?」
「嫌だ、嫌だぁ…」
”キモイんだよお前””感情無いんじゃない?””近寄ったら殺される。”

「違う、私のせいじゃない…」
「落ち着けって瑠璃。」

”最低女””人殺し”

「殺してなんかいない…私じゃない…嫌ぁ…」

”お前なんて誰も必要じゃない”
”近づかないで”
”死ねばいいのに”

「嫌だ嫌だ嫌だ…」
これ以上何に苦しむの?私は本当にこれでいいの?どうすればいいの?
助けて、誰か…お父さん…
「それくらいで俺が嫌いになるわけねぇ。それに、瑠璃が好きだろうがなんだろうがお前なんかに関係ないんだよ!ふざけたこと抜かしてんじゃねぇ!」
そんな言葉が聞こえた。その声は冷からだった。
私のことで怒ってくれてるのが、はっきりと分かった。
昨日の冷の言った言葉を思い出した。
《嫌ってるならそれでいい。でも俺が好きなのは瑠璃だけなんだ。》
もう嫌われてると自分自身で決め付けていた。
信じる事なんかしたくなかった。
いまだに冷を信じる気なんて無かった。
そんな時、自分の携帯が鳴った。
「はい…はい…えっ?…嘘…」
「瑠璃?どうかしたか?」
「今からそっちに向かいます。はい…」
通話ボタンを切り、ポケットにしまった。
「瑠璃?大丈夫か?」
「ごめん、ちょっと行って来る。」
「おい、本当にどうしたんだよ。」
「お母さんが…倒れたって…」
”落ち着いて聞いて頂戴、瑠璃ちゃんのお母さんが倒れたわ。今意識不明の重体で、病院へ搬送されたわ。”

お母さんの職場から電話がかかってきた。
お母さんは最近夜遅くまで働いていたから、体調が少し悪かった。
最近働いてばっかりで、まともに睡眠時間すら取れていなかった。
今日も、早くから仕事に出て行こうとしてた。
今日くらい休んで欲しいって言ったけど、大丈夫って言って…
何であの時に止めなかったんだろう。
止めておけば大丈夫だったかもしれなかったのに…
それ以前に、早く行かないと…
それなのに、上手く足が動かなくって歩けない。
「瑠璃?!」
動こうとしたら足に力が入らなかった。
意識が徐々に薄れていって…
私はその場に倒れた…