初めて会話したのはこのときだった。
この頃俺は何で来たのか理由が分からなかった。
聡さんとは、何回か会って話すことはあった。けれど、受験日の二週間前に亡くなった。
もしかしたらだけど、自分がもうすぐ死ぬことを知ってたんじゃないかって思う。
それで自分の娘の学校での姿を知りたかったんじゃないかって俺は考えた。

「瑠璃のことを何にも知らないくせに、そんなこと言わないで!貴方なんかに瑠璃の苦しみが分かるの?!受験前に親を亡くしてるのよ!両親がいる貴方なんかには分からないわ!」
「かな!そこまでにしとけ!!」
もう一回叩こうとしたかなの手を、押さえてかなを抱きしめるカイ。
かなは目から大粒の涙を流して泣いていた。
「何よ、親がいなくても生きていけるじゃない。バイトしてれば生きていけるわ。それもしないなんて、バカじゃない。」
「それ以上言ってみろよ。俺がお前を殴ってやるから。」
「っ…あんな奴の何がいいのよ!知ってる?!あの子中学の時は不良だったのよ?!それもただの不良じゃないわ!あのこの同級生は皆言ってた!人間じゃないって!なのになんでそんなに庇うのよ!!」
何でそんなことこいつがそんなこと知ってるんだよ。
ここに入った理由は、同じ中学の奴がいなかったから。
だからそんなこと知ってる奴なんかいないはず。
なのになんで…
「何で知ってるんだ?」
「私の友達から聞いたのよ。」
「へぇ…で?それが何だ?」
「だからあの子は…」
「不良なんだろ?そんなもんとっくに知ってるんだよ。」
「何でよ、知ってるならなんで好きなの?!」
「自分の勝手じゃねぇかよ、お前なんかに指図される気はねぇ。」
自分の好きな奴庇うのは当たり前じゃねぇか。
自分以外の奴に、そんなことで指図される気なんてさらさら無い。
好きになるのに理由なんているか?そいつ自身の全てを知っても好きでいちゃいけないのかよ。
瑠璃がそんな不良だったかなんて知ってる。
でもそれが何だ?不良だからって嫌うのか?自分が危険にさらされても、俺は嫌いなんかにはなりたくない。
あいつが喧嘩に行くなら、俺も行く。
一人で何でも抱え込むし、一人で泣く。
どんだけ強いかなんて俺は知ってるんだ。
あいつを皆嫌ってた、それでも俺は知ってるんだ。あいつは殴った奴に泣きならがらごめんなさいって謝ってたんだ。
そんな優しい心を、持ってる。
そこに俺は惚れたんだ。
「言っとくけど、そんなことで俺は驚かねぇよ。同じ中学だからな。それくらいで俺が嫌いになるわけねぇ。それに、瑠璃が好きだろうがなんだろうがお前なんかに関係ないんだよ!ふざけたこと抜かしてんじゃねぇ!」
「そんな…」
「もう分かっただろ?あいつにもう近づくんじゃねぇ。俺等にもだ。それと、お前以外の奴等にも言っとけ。何かしたら俺が殴るってな。」
「はい…」

さて、これで一件落着か?
主犯も見つかったし、これで瑠璃も来られると思うし。
これ以上何にも起きなきゃいいけどな。
俺のそんな期待はあっさりと裏切られた。