次の日に、俺等は話し合っていた。
何で瑠璃がいじめを受けているのかについてだ。

「さてと、どうやって主犯を見つけようか。」
「そうね、何かいい案は…」
「そんなのは要らないわよ、徹底的に質問していけばいいのよ?大悟君…だったかしら?」
「あぁ、俺が何だ?」
「瑠璃のいじめ現場にいたんでしょ?誰か見たんじゃなくて?」
「あぁ、あいつ等は確か三組の…」
「その子達をここに連れてきてはどうかしら?」
何でだ?何故だか今日のかながもの凄く怖いんだが…俺の気のせいなのか?
さり気なく俺は健たちの方へ、視線を移した。
健たちも何でか少し、引き気味だった。
カイは、もの凄く青い顔をしていた。
その様子を見て俺は思った。
かなだけは絶対に怒らせないと…
「んじゃ、俺そいつら呼んでくるわ。」
とか言って、大悟は呼びに言った。

「何?冷君♪」
何も知らないからって、キャピキャピしててすんごくキモイなこいつら…
「単刀直入に言うが、何で瑠璃をいじめた?」
「何のこと?絵美わかんなぁ~い。」
あぁぁぁぁぁ!!うざい!
何でいちいち語尾を延ばすんだよ!キモ差倍増ぉぉ!!
自分の本性が戻ってくるまでキモイとか…
あぁ~…もうめんどくせぇから戻すか。
「しらばっくれるのは止めときなさいよ?貴方達がいじめてるのは知ってるんだから。」
「だからぁ~、絵美は…「ふざけていないで真面目に答えてくれるかしら?」だから知らないっていってるでしょ?!」
その一言は大きくて、教室だったのでクラスメイト達は俺達の方へ向いて静かになった。
「たとえば私がいじめていても、その証拠は?!無いのにそんな事いうの?!」
はい、逆ギレはいりまーす。
返品いたしますねー。
もうこいつ自分の作ってたキャラ自体忘れてるって、焦ってんのか?
「証拠ねぇ…」
「無いんでしょ?だったらこの話は終わりよ!」
教室から出て行こうとして、扉に手をかけたときにかながその手を掴んだ。
「まだ私の質問、終わってないわ…まだ返さないわよ?」
そしてその腕を引っ張って、扉から離した。
何だか今日のかな…人格が違って恐ろしい。
「さてと、何で私の親友をいじめるのかしら?」
「だから私はっ…「いじめてないって…?」そうよ!」
「まだそんなこと言い張るの?いい加減にしてくれないかしら?私はもう本気で怒ってるの、それに何で貴方を呼んだと思う?冷と貴方を呼びに行った大悟君は、貴方のしてる行為を見ていたのよ。それでも言い逃れするのかしら?」
ニッコリと笑うかなの笑顔は、冷たくて背中に寒気が走った。
「嘘…」
小さく呟いたつもりなんだろうが、俺にははっきりと聞こえた。
”何でバレてるの…”って言葉がな。
その一言で俺の中の一本の紐が切れた。
「へぇ、事実だったみたいだな。」
「冷君、違うの!絵美は…「ふざけんじゃねぇよ!」っ!」
俺の大声に、野次馬共が集まる。
そんなこと気にかけてる暇は無かった。
瑠璃にいじめをしていたという事実に、俺は腹が立った。
「随分と長くいじめてくれてたみたいだなぁ、あぁ?毎日毎日俺等の邪魔もしてくれたみたいだしよぉ…お前一体何様のつもりなんだ?てめぇ見たいな奴のしてたちんけで姑息ないじめを受けてる彼女を守れなかった俺がバカみたいじゃねぇか。一体何してたんだ?俺に全部言ってみろよ、お前が今まで瑠璃にしてきたいじめをよ…俺が全部お前にしてやるよ。抵抗できないように縛ってからな。それとも何だ?後二人連れて俺もお前に三人がかりで殴り潰してやろうか?」
「嫌!そんなのやだぁ!!」
「嫌なんだなぁ、まぁ当たり前だな。そんなの痛いだけだもんなぁ。止めて欲しいよな?」
「止めてよぉ…」
「止めてくれると思ったか?なぁ、泣けば俺が止めると思ったのか?!止めるわけねぇだろ?!お前が最初に始めたことなんだろ?!だったらこんな事だけで泣いてんじゃねぇよ!ふざけてんじゃねぇ!二度と俺の前に顔見せんじゃねぇ!!」
ここまで怒鳴ったのも久しぶりだった。
「ごめんなさい…」
声を震わせて泣いてる奴を見ても、俺はなんとも思わなかった。
自分も瑠璃を追い込んだが、ここまでしないと気がすまなかったんだ。
瑠璃とした約束は守らないといけないから。
「冷、お前が怒鳴るなんて珍しいな。」
「そうか?別にそんなでもないと思うけど?」
「あらあら、泣いてるの?」
「かな?どうしたんだ?」
絵美とか言うやつに近づいて、かなは言っていた。
「飛来さん…?」
「愚痴とか吐いてもいいのよ?」
「飛来さ…「私は貴方にがっかりするわ。」へ?」
「いちいち泣いたり、怒ったりなんてね?貴方は大層ご立派なのね?皆に良い子とか言われたかったのかしら?そんなにも褒められたかったの?そんなにも見て欲しかったの?それなら私が、貴方を褒めてあげましょうか?心も中身も何にも無いけどね?」
ニッコリと笑うかなの笑顔は悪魔のようで、黒かった。
「何なのよ!皆して瑠璃瑠璃って!」
「逆ギレは見苦しいわよ?」
「何でも持ってるんだから一つくらいいいじゃないの!成績優秀何だから!」
「それだけで瑠璃をいじめたのか?」
「そうよ!それの何が悪いのよ!」
「逆恨みじゃないの、そんなの…」
確かに、瑠璃は成績がいい。でもそれには理由があった。
それは奨学金の為だ。
母子家庭の瑠璃は、少しでも家計の負担を減らす為と言っていた。
不良から変わろうとしていた時に、俺は瑠璃に勉強を教えていた。
成績表を見せてもらった時、今の瑠璃からは想像すらできないくらい悪かった。
オール1なんて…漫画だけだと思ってた。
教えていると、瑠璃は真剣に俺の話を聞いて一生懸命に勉強してここまで上ってきたんだ。いつの間にか俺は瑠璃に抜かれていたがな。
「あの子がいなければ親に怒られないのよ!なによ!さっさと死ねばいいじゃない!親の為なら先に死んだ方がまだマシじゃないのよ!」
”パンッ!”と、頬を叩く音が聞こえた。
かなだ…
かなが頬を思いっきり叩いた音だった。
「何すんのよ!」
「もう一回言ってみなさいよ…今度は反対側を叩くわよ!」
かなの目には涙が溜まっていた。
かなもカイも、瑠璃の家の事情を知ってるからな。
俺は、受験生本番三ヶ月前に瑠璃から言われたんだ。
 ”この先は自分でやるから”
と言って、自分の勉強に専念していた時にあったんだ。
図書館で勉強していた時、正直驚いた。


「君、冷君か?」
「はい、えっと…」
「瑠璃の父の、聡です。」
「えぇ?!…と、すみません。少し外行きましょうか。」
「あぁ、そうだね。」
そう言って俺等は、図書館の外へと出た。
少し肌寒かったがいいとしようか。
「瑠璃のこと、色々とありがとう。」
「いえ、俺は特に何も…」
「瑠璃が自分以外のことを話すなんて珍しくてねぇ。つい君の居場所を聞いてきてしまったのだよ。受験生に悪いがな、瑠璃について聞きたかったのだよ。」
瑠璃は親とは話すんだな。
てかちょっと待てよ、何で瑠璃が俺のいる場所知ってんだよ!!
そこに関してはあえて聞かないが、その情報はどこだっての!
限りなく意味の分からない突っ込みをして、俺は瑠璃について知ってることを話した。
「瑠璃ですか?俺の知ってる瑠璃は無口ですね。皆不良、危険人物、関わりたくないと言ってます。自分以外は人と思って無いだとか。感情がないと言ってますね。」
「そうか…君にはどんな風に見えてるのかね。」
優しい目で見つめる聡さん。
その目はたまに見せる、瑠璃の優しい瞳とそっくりだった。
「俺にとっては、優しくて真面目な奴ですね。勉強を教えてる時も真剣で、分からないとこは分からない。とにかくはっきりでした。表情がころころと変わってて、一緒にいても全く飽きません。」
「瑠璃は、好きかい?」
「えぇぇ?!」
直球に聞く聡さんに俺は少し、びっくりした。
ここまではっきりと聞かれたのは初めてだった。
俺は少し真剣に考えた。
俺は瑠璃をどう思ってるんだ?
今まで女なんて腐るほど周りにいた。
そいつ等は俺のことをただの人と見ない。
周りの男子は俺を褒めてりゃいいとか思っててむかついた。
それでも瑠璃は違ったんだ。
ただ一人、俺のことをただの人としてみてくれた。
俺はそれが一番嬉しかった。噂で聞いた事はあったが、その噂は当てにならなかった。
屋上で瑠璃を見かけたときの瞳を、俺はきっと忘れないだろうな。
澄んでる綺麗な黒い瞳に、綺麗でさらさらな髪…
白い肌にずっと触れていたいと思った。
それから何かと理由をつけては、瑠璃の元へと行った。
今まで理解できなかったこの感情…
その感情の理由は、今はっきりと分かった。
「俺の初恋です。瑠璃しか好きじゃありません。」
「そうか、ありがとう。勉強している時に、話しかけてしまって。」
「いえ、俺も話しが出来てうれしかったです。」
「それでじゃ…」
そう言って、帰っていった。