空が飲み物を買いに行って随分と時間が経った。
一体何しにいったんだかね、このままじゃ教える時間がなくなるっての。
そんなことを思った矢先に、扉が開く音が聞こえた。
「どこまで買いに…」
入ってきたのは空じゃなかったから、私は言葉が詰まった。
だって入ってきたのは、帰ったはずの冷だったから…
「なんで…」
「話がしたかったから、戻ってきた。」
「あんたと話すことなんて無いって言ったじゃん。帰ってよ。」
「俺はもう逃げないって決めたんだ。せめて話しだけでも聞いてくれよ。」
「…聞くだけならいいけど、返答はしない。それと、そこから近づかないで。」
何か言いたそうな顔だったけど、何も言わないで冷は了承した。
「座ってもいいか?」
「勝手にして。」
私はそっぽ向いて、冷から顔を逸らした。
しばらくの沈黙が続いて、冷は少しずつ話していった。

「なぁ瑠璃、俺らの最初の話し覚えてるか?俺が中2の時に、授業だるくて屋上に行ったときお前が先客だったんだよな。一人で屋上にいて、俺が来たら瑠璃第一声が帰れって…女がいつも俺を取り囲んでるけどさ、お前が初めてだよ。あんな事言ってくる女なんてさ。」
そう言えばそうだっけ、あの頃の私荒れてたからなぁ…
知ってる奴のいないところに入学したから、気楽だったしその裏腹…生意気だって喧嘩も売られてて。だるかった。

*~*~*~*~*~
「お前なんでこんなとこにいんの?」
「授業メンドイからに決まってるでしょ、いいから帰れ。邪魔。」
いきなり屋上に来た男。
誰だこいつ…興味ないから別にいいけど。
「ここ立ち入り禁止だろ?何でいんだ?」
「人の事言える?あんたこそなんでよ。」
「俺?授業放棄だけど?」
お前もかよ…
あぁ~あ、せっかく気持ちよく眠ってたって言うのに邪魔しやがって…
起き上がって、帰ろうとして横を通り過ぎたとき腕を掴まれた。
「何だよお前…」
「……」
じっと顔を見てきて、何も言わない。
腕を振りほどきたいのに、力が強くて振りほどけない。
「離せよお前…」
「お前さ、名前は?」
「教える義理はないね、誰が教えるかよ。」
掴まれてた腕は離された。
掴まれてた所が痛い…
どこから出てるかも分からない力で少し驚いた。
「何がしたかったんだよお前…」
軽く睨んでも効果は無かった。
「お前さ、髪伸ばしてみれば?喧嘩とかやめて、口調直せばいいじゃん。」
「何でお前なんかにそんな事言われなきゃいけないんだよ。」
「ん~…よく見たらお前可愛いから。」
「はぁ?!バカじゃねぇの?ふざけたこと言ってんな!」
怒鳴って私は、屋上から去った。

*~*~*~*~*~*~
「ってことあったよな。初対面の人にあんな事言われたの初めてだよ;」
あの頃に比べたら変わったかもね…
喧嘩やめて、口調直して、髪の毛伸ばして…
それしてる時は、冷も何でか性格変わってた。
その理由は何でかは知らないけどね。
「俺の性格の変わった理由知らないんだったよな、教えておくか。」
別に気になっては無いんだけど…
「瑠璃言ってたよな、俺が付き合う気ないかって聞いた時に…”物静かな人がいいからヤダって”それで変えたんだよ。」
その事実は知らなかった…
まさか私の好みに冷まで、性格変えてたなんて…
そんなこと知らなかった、思わず私は冷の方へと顔を向けた。

「やっと、顔向けてくれたんだな…」
「…話はそれだけ?なら帰ってよ。」
「俺は逃げないって決めたんだよ。」
「意味が分からない。」
「俺はもう、嘘つかないって決めたんだよ。」
「話が噛み合ってない。」
「俺、やっぱり瑠璃が好きなんだ。」
意味が分からない、辻褄が合ってないのに話を進めていく冷…
そんな冷の話を私は黙って聞いていた。