《もういい加減に関わらないでくれる?しつこいんだけど…私がいなかったときに何が起きたかなんて知らないけどさ、一回は裏切ったんだよね?今更謝られて許す気なんてさらさら無い。もう二度とこないで。近寄らないで。》

この言葉を聞いたときに俺は思った。
本気でもう二度と俺に笑顔を見せてくれないと…
もう二度と、俺は瑠璃の隣に立つことはできないんだと…
ここまで苦しくなったことは無かった。
俺の記憶にある瑠璃の表情は笑顔とかだった。
あそこまで冷たい視線を向けられたことなんて無かった。
今まで瑠璃は、別の男子と話すことはあっても俺のことを見つけるとすぐに駆け寄っていたのに、今はそれすらも無かった。
俺のことなんていないかのように、楽しそうに話していた。
ここ数日に、瑠璃の笑顔なんて見なかった。
久しぶりに見た瑠璃の笑顔は、綺麗だった。
今まで俺だけに見せてくれた笑顔だったのに…
俺だけが独占してきた笑顔だったのに…
その笑顔はもう俺にはかけらも見せてくれなった。

自分で何してきたかなんて分かってる。
自分が一番瑠璃を苦しめてきたってことは十分知ってる。知ってて俺は何もしなかった。
ばかだな、俺は本当に…
「冷…」
「俺さ、何で今まで気づかなかったんだろうな…」
「冷?」
「こんなになるまで気づかなくてさ、今更になってこんなに大切な人だって分かった頃には遅くて…」
「ただの言い訳じゃねぇかよ。」
あいつは、瑠璃といた奴…
「随分と無様な姿だよなw」
「何のようだよ…」
「別に、飲みもん買いに来ただけ出し。」
「冷、とにかく帰ろう?」
かなにそういわれて、俺たちは振り返って歩き出した。
「逃げるんだな、そうやって…」
逃げる…?
「自分が何したかわかってんだろ?なのに何もしないのか?そんなんじゃ俺がもらうけど?」
「てめぇになにが分かる!」
「同じ事になったんだよ!!俺はお前と同じ事したんだ!そいつはもう還ってこないんだ!」

どういうことだよ…殴りかかろうとした手を戻して、俺は空ってやつの話を聞いた。

「俺もお前と同じ事やったんだよ。同じクラスで幼馴染の奴に…彼女だったのに何も気づいてやれなかった。けんかして、そいつは海に制服のまま入っていった。台風が接近してるときに入って行ったらどうなるかわかんだろ?そいつさ、波にさらわれて数日後に浜に打ち上げられた。息はもう無くてもう謝まる事すらできないんだよ…こないだはそいつの命日で、海に行ったら瑠璃が同じ事していてさ…そいつと重なって怖かったんだよ。もうそんな奴を見たくなかったんだよ。俺は逃げたも同然だ。でもお前は違うだろ?まだ話すこともできんじゃねぇかよ。帰れって言われて素直に帰るんじゃねぇよ。後悔しても遅いんだぞ?」

そう話す空は、目に涙を浮かべていた。
自分の大切な奴とけんかしたまま別れてしまうなんて俺には考えられなかった。

「どうするんだ?」
「…ワリィ、俺今すぐ瑠璃んとこ行ってくるから先帰っててくれ。」
「「「了解!」」」
健たちにそう伝えて、俺と空は瑠璃の家へと引き返した。

―瑠璃の家―
「なんか悪いな…」
「いいって別に、瑠璃の性格がさ似てるんだよ。彼女にさ…ほっとけなくてな。」
「そうか…」
「頑張れよv」
「キモイ。」
「そんなすっぱりと∑(-□ー;;)」
「絵文字使うなよ;」
「いいのいいの、さて、いきましょうか。」
「あぁ。」

俺は覚悟を決めて、中に入っていった。
瑠璃に何言われても俺はもう逃げたりしない。