ガタンっ!

自習中で静かだった教室に、イスから立ち上がる音が響いた。

「…どうした。」

教卓で本を読んでいた教師、原みずきが、
突然立ち上がった男子生徒に向かっていった。

男子生徒は原を無視し、そのまま咲山慎の席の前に立った。

「慎さん、すこしいいですか!?」

男子のその一言で、読んでいた本から顔をあげる慎

「なぁに?」

ふんわりとした、柔らかい物腰で、あくまで女の子として話す慎

そんな慎に、赤くなりながらも必死に何かを言う生徒

「…?」

慎は聞き取れなかったのか不思議そうに首をかしげる

「あの…!俺!慎さんのことが好きなんだ!!俺と、付き合ってくれっ!」

顔をさらに赤くしながら言う男子生徒
静かになった教室に、冷やかしの声があふれる。

慎は内心困惑しながら担任の原の顔を見た。

「ぷッ…ははっ…!」

思わず漏れた原の笑い声

「ひ、酷いです先生!俺、真剣なのに!」

男子生徒は若干涙目になりながら抗議した。

「あぁ?俺は本の内容に笑っただけだぜ?」

クスクスと笑いながら、教師らしからぬ発言をする原に、周りの生徒たちは同じように笑い出した。

ざわざわと煩くなる教室

あちらこちらから「どうするんだよ咲山」と慎に声が掛かる。

困惑した慎は、ただ、オロオロとするだけだった。

「……。まこちゃんは渡さない…。慎は、私のもの…!」

こゆきは、誰にも聞こえないように静かに呟きながら、慎の腕をぐいっとひいた。

「わぁ…!」

力にあらがわず、そのまま立ってしまう慎

「ゆきちゃん?」

不思議そうに呟いた慎の腕を引きながら教室の扉に手を掛けるこゆき

「…ごめんね?君に、まこちゃんは渡せない。」