「先生、相談があるんです。」

立ち上がるタイミング、声を発するタイミング、すっと、手を上げるタイミング、すべてがそろった、その二人。

原は、本から目を上げてはぁ…と盛大にため息をついた。

「ここじゃダメか?」

ちらりと時計を見ながらそう言った原に、間髪入れずに頷く二人

「仕方ねぇな。生徒指導室行くぞ。咲山、お前、前島の相談が終わるまで保健室にいろ。」

原は立ち上がり、こゆきをつれて廊下に出た。

慎もそれにこくりと頷きながら保健室に向かった。


in生徒指導室

「で、相談って何だ?」

生徒指導室の電気と換気扇のスイッチを一緒につけ、タバコをくわえてイスに座る原

「はい…。私、好きな人がいるんです。その人は、優しくて、笑顔が綺麗で、家事も万能で…私にはないものを、すべて、持っているんです。」

原の向かい側に座ったこゆきは、相談事を持ちかけだした。

原は黙ってそれを聞いている。

「…本当に…本気で、好きなんです。でも…私の好きなその人は…」

そこまで言えば、まるで涙を我慢するかのように息詰まるこゆき

「……女……か?」

肺にとりこんだタバコの煙をゆっくり吐き出した原。

その後の一言に、こゆきの肩は、ぴくり、と動いた。