扉を開くと兎が待っていた。
真っ黒な石造りの何もない空虚な部屋の真ん中で深々と御辞儀する。
その姿は今までの幼さや無邪気さは一切無く、進行役の雰囲気を身に纏っていた。
いつものかわいらしいワンピースも黒光りするスーツワンピに着替えられていた。

非日常にこれから対面すると思うと足がひとりでにすくむのがわかった。
でも、怖いわけではない。
この圧倒的な威圧感に寧ろ心地よさを覚えるくらいだ。

私を先頭として部屋に入った七人の罪人。
目の前の兎の仮面をつけた進行役。
まだ知らないゲーム盤の上へと誘う兎はその場で三回ほど回ったあと、足を揃えて御辞儀する。

『それでは、これより会場に移動します。
少々揺れますが、ご了承ください♪』

兎の言葉が終わると同時に部屋全体が大きく揺れた。
鈍い機械音をならしながら下に下がっていくのがわかった。
初めてここに来るときに通ってきた兎の穴と同じ感覚を覚える。
床に足がついてる分、お腹に感じる不快感がとてつもなかった。

しばらく下がった後、再び部屋が大きく揺れて止まった。
耳障りな音と共に兎が奥へと進む。

『覚悟はいいですか?』

その言葉に、皆一斉に頷いた。