頭が狂ったとか、幻覚とか、まったく思わなかった。 現実に、いたのだ。 相手の息づかいまで聞こえたような気がした。 チラッと背後にある掛け時計を見た。 午前2時。 丑三つ時である。 しかし、不気味な気持ちは、まったく、なかった。 むしろ、春の木洩れ日の中にいるような、暖かい気持ちが全身を支配していた。 また会いたい。 僕は朝まで鏡の前にいた。