寒くもなく暑くもない、高校に入って2度目の春がやって来た。
さゆみは高校2年に進級。俺は相変わらず屋上や図書室で時間を潰している。昼休みになると、さゆみは屋上に来て一緒に昼飯を食べてくれる。そして今、放課後になると俺たちは、妖月学園高校の裏庭にある桜の木の下で、どうでもいい話をして過ごしている。
いや、どうでもいいってことはない。去年までさゆみと、こんな風に時間を過ごせるなんて想像すらも出来なかったんだから。今でもこれが現実かなのかどうかさえ戸惑うことがある。
でも、この時間がずっと続けばいいのにと心から思う。
「…ねぇ龍牙。」
「っん?なんだ??」
「また、考え事してた?」
「え、…あーまぁな。」
「………」
「…………まぁなんだ。」
「?」
「とりあえず帰るか。」
「え…あ、うん。」
「走って(笑)」
「……えっ??」
「さぁ家まで競争だっ!」
「え、ちょっちょっとまって!!」
「よーい、ドンッ(笑)!!」
「えーー!?ちょっ龍牙まってよー!!」

―――――――。

「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」」
「俺の勝ちだなっ!」
「はぁはぁ、誰が俺の勝ちよっ!?思いっきりフライングしてたじゃないっ!!」
「まぁまぁそう怒るなって(笑)」
「怒ってなんかないもんっ!ただ真実を言ってるだけ、であって…ってあっ!!」
ガクッ!
「おっ…と!」
「……あっ。」
「大丈夫か?ちょっと無理しすぎたか。」
「そ、そんなことないもん!こ、これはただ…ただ…… 」
「クスッ(笑)」
「な、なによ?」
かわいい。
「…ちょっとごめんな?」
「…えっ?」
「よっ……と!」
「っ!!??」
「部屋までお連れします、お姫様。」
「なっ、お姫様だっ……お、降ろして龍牙っ!」
「だーめ♪」
かわいい。
「だーめじゃなーい!私重いから!重いでしょっ!?だから早く降ろしてっ!」
「全然重くねーよ?むしろ軽い軽い、お前もっと食ったほうが良いぞ??」
「そ、そんなバカな…、絶対嘘だー。」
嘘じゃねーよ。
「さゆみ…、」
「んっ?なーに??」
「くすっ(笑)…お前、本当にかわいいな。」
「っ!!??……もう、またそんな嘘を言うー。」
「だから、嘘じゃねーって(笑)」
―――本当に、この幸せな時間がずっと続けばいいのに・・・―――――。