「いや、それはないでしょ。いじめてた人に普通抱き付いたりしないって」
神崎の言葉に、仁香は反論する。
いつの間にか、琉希くんに対する軽い討論へとなっていた。
「…それもそっか」
『うん…。私も琉希くんにいじめられてたような記憶はないよ。
もしそうなら、忘れたりしないと思う』
さすがにフルネームは危ういけど、私をいじめていた人の顔ははっきりと思い出せる。
一人、二人、三人……。
ううん。
そんなもんじゃない。
女の子の集団。
男の子からも。
……クラス単位でも。
私に対するいじめは、弱者を集団がいびるという最低な行為から来るものだった。
