私が愛したのは最低な人間でした


怯える必要はもう無い。


私は解放されてるんだ。





いじめられていたのは過去の話。





今の私には、優しくて大切な大切なみんながいる。



だから、私はこの学校で楽しい生活を送ることができているんだ。





「そういえば、伊波もそうだけど凜も埼玉出身だよね?」





いじめの話から話題を変えるように、仁香が明るい口調で言った。





『うん。東京に来たのは小六になって、少ししてからだったかな?親が離婚しちゃってね』





学校でいじめを受けていた間、家庭の方も崩壊しかけていた。



両親は度々怒鳴り声を上げて喧嘩をして、私はその声を聞くのが嫌で家にいる時は、ほとんどの時間を自室に籠もって過ごしていた。



だから、これ以上揉め事を聞いてもらうわけにもいかなくて、私は未だにいじめられていたことを親に話してはいない。





「そうなんだ…」



「藍澤は苦労人だな」





“離婚”の二文字に反応して、仁香と神崎はそれぞれの意見を述べる。





『あはは。もう慣れたけどね』





離婚後、私は母親に引き取られて、母の実家が都内にあることから東京にやって来たんだ。



困った時は祖父母が助けてくれる。



だから、父親がいなくても寂しくはない。





「でもさ、不思議じゃない?つい最近まで埼玉に住んでた伊波が、凜のことを知ってんだよ?小学校が同じだったとかあるんじゃないの?」



「もしかしたら、藍澤のこといじめてた奴かも…」





琉希くんと小学校が同じ?


琉希くんは私をいじめてた人?