私が愛したのは最低な人間でした


相変わらず盛り上がってるなか、黒髪の女子生徒の顔だけが確認できなくて。





後ろ姿。





正直、俺の記憶の中にいる約六年前の凜の姿と重ね合わせてみても、同一人物なのかはよくわからなかった。






こっち向いてくれないかな…。





もどかしい気持ちでそれを待つけど、振り向いてもらえる感じは全然なくて。





「ねぇー?どこ見てるのー?」



「琉希くーん?」





周りにいるクラスメート達の声が、右耳から左耳へと流れるように通り抜けていく。



俺は、一切の五感をその黒髪の生徒に集中させていた。





凜…。



凜……!





お願いだから彼女であってくれ!





必死に願う。



強く強く。





『な、なぁっ…!!』





黒髪の子が凜なのかどうか知りたいと思うあまり、気付いたらその子に声をかけていた。



席を立って、俺に背を向けて立っている彼女に駆け寄る。





『ねぇ、キミ!』





驚いた表情で俺を見上げる茶髪の男子生徒と、亜麻色の女子生徒を尻目に、俺は目的の子の腕を掴んだ。





「わ……っ!」





ビクッとしながら、俺に腕を掴まれた女子生徒が顔を上げて俺を振り返る。





その瞬間、俺と彼女の視線が重なった。