沈黙を破ったのは相手だった。


「お前…、いや、箕ノ口沙亜羅。俺について来るか?」


唐突に呼ばれた自分の名前。1つ言っておこう。
私はこの男を知らない。


「おい、聞いてんのか?」


「な…まえ…。」


一瞬訳が分からないみたいな顔をした様だったけど、納得した様な顔になって


「んなこと後でで良い。来んのか、来ねーのか、どっちだよ。」


行く場所なんてない。帰る場所なんてもっともない私は、どうにでもなれ、という気持ちでついて行った。