太陽の家

『俺は、落ちこぼれの中卒で色んな苦労をしてきた。姉貴にまで、そんな思いはさせたくない。姉貴は、俺と違って夢もある。それを、叶えてほしい』


『いいよ、お母さんや恵汰の負担を増やしてまで、学校なんかいけない。夢なんていらない』


『そんな事言うなよ。夢があるってのは、すごく幸せなことなんだよ。きれいな花を咲かせる種があるのに、育てないなんて、もったいないじゃん』

由希はそうでもないが、中学時代の弟は取り柄もなく、学校では、落ちこぼれ扱いされていた。

それでも中学はなんとか通えたが、高校は絶対、行かない…と断言した。

そして今は、工場で働いている。

自分は、母と、弟の唯一の希望だったのだ。


由希は、大好きな絵をもっと勉強したかった。

その夢をかなえるため、上京を決意した。

由希のいま通ってる岡沢芸術学院は、由希が高校の頃からずっと行きたいと思っていたところだった。

最初は学校の近くの安いぼろアパートで暮らしていたのだが、ドロボーに入られ、家賃を払えなくなり、家電を売るハメになった。

そして、たまたま知り合いに聞いた、ここへおとずれたのだ。