太陽の家

「…あ、こんにちは」

「コンニチワ」

クモは立ち止まり、無機質な表情でイモ子を見た。

「…………………」

その視線に耐えられず、階段を駆け上がろうとしたが…………。

「ちょっと待って」

「は、はい………」

言われて止まったものの、視線が合わせられない。

「スケッチ、みして」

「あ………はい?」

「それ」

自分の抱えていたスケッチを指された。
(…………………ユキの絵、あるけど)

しかし断る理由もなく、少し震える手で渡した。

「…………どぞ」

それを受け取ったクモは階段に腰かけ、イモ子のスケッチをパラパラと開いた。

(ユキの絵、見て………怒られたら、どうしよう。てか、すごく…気まずい)

クモはスケッチを一通り見て、軽くため息をついた。

「……………あの」

クモはいきなり立ち上がり、顔を近づけてきた。

「あんたの事、色々わかったよ。上原由希」

「え…………?」

どこか恐怖を感じたイモ子は、本能的に後ずさりした。

「…あんたの父親、借金残して死んでって、母親は体が弱くて寝たきりで、弟にそんな母親まかせて上京してきたんだってな」