マンションのロビーに到着したユキは、先ほどいた号室の郵便受けを探した。

「………あった」

見つけると、ユキはケータイを取り出し、つい先ほど届いた、あの女性からのメールを開いた。

『6235』

「……了解」

一人呟き、ユキはその番号を打ち込んだ。

中には、白い封筒が一枚あった。

「…よっしゃ」

中は、現金だ。

お金の払い方は、客におまかせしてある。

普通に手渡しで渡してくるのもいれば、今の客の様に、"直接払うのだといかにも業務的という感じがする"という人もいるので、渡し方は十人十色だ。

相手が、支払ってこなければ…関係はもうこれきりにするだけだ。

相手が裏切ったならば、自分も裏切り返す。

オートロックのマンションを出ると、目の前にはクモの車が止まっていた。

中には、タバコをふかしているクモの姿がある。

「………………」

ユキは車の助手席に乗り込んだ。

「帰っていいって言ったのに」

「………………………」

クモは無言のまま、車を走り出した。