「クモ」

そう呼ばれると、そのボーイはこちらに視線をよこした。

「…タイヨウ」

「来ちゃった♪何か作ってよ」

そう言って、タイヨウはクモの目の前のカウンター席についた。

「高校生は入店禁止」

冷静に言い放ち、タイヨウに背中を向けた。

「高校生じゃないよ。言っとくけどハタチ超えてるから、俺」

そうは言うものの、童顔のタイヨウが迷彩のでかいジーンズに、黒のタンクトップを着ても、いきがった高校生にしか見えなかった。

「………何か用か」

「クモは元気で仕事してるかなーと思って」

「嘘付け。何かあんだろ」

「…………ラヴァーズ・キスお願い」

ラヴァーズ・キスはこのバーのオリジナルカクテルだ。

「……………………」

あくまでしらばっくれるタイヨウにため息をついて、シェイカをふった。

「…どーぞ」

しぶしぶ出されたカクテルをタイヨウは一口飲んで舌を出した。

「ん、ちょっと苦いな」


「………………」


「今日、ユキとイモ子が一緒に帰ってたよ」