「俺が話を聞いていくら想像してみても、それはあくまで俺の理解の範疇であって、やっぱり他人同士だし、完全に理解しあうことは不可能だって気づいた」

「………うん」

「でも、それでも相手を解りたい、解ってあげたいって気持ちが大事だって」

「……………うん」

ユキの言いたいことは、わかる。

「…イモ子が、俺にその気持ちを向けてくれたことが嬉しい」

「…え?」

「俺のこと、わかろうとしてくれたのが嬉しい」

「あ、うん………」

まさか、そう言われるとは思わず、イモ子は戸惑った。

「へへッ」

「へへ」

ユキにつられて、イモ子も微笑んだ。

幸せな気分でユキの隣を並んで歩いた。


その姿を、後ろから見ていた存在にも気づかずに。




深夜。

裏通りのさびれたビルの地下にあるバーに男は入っていった。

上はタンクトップ一枚で、肩には刺青が彫ってある。

バーを覗くと、無言でシェイカをふるボーイに目がついた。

長身で、美形で、この店の雰囲気によく似合っている。