太陽の家

かつての彼女、ノリだった。

「ずっと留学してて…昨日、戻ってきたんだって」

「………………」

「あんたと同じ、植木…持ってるよ」

ノリコは、夏生の前にひざまずいて、両手で植木をさしだした。

「……私も、冬美ちゃんからもらったの」

「…………………」

「へへっ……おそろいだね」

自分が育てた花と同じ香りが鼻をかすめた。

「…………ああ。同じ匂いだ……」

「夏生…」

「ん?」

ノリコは膝元にそっと植木を置いた。

「冬美ちゃん……忘れられないんだね」

「……………うん」

「私もさ…夏生のこと、忘れようと思って留学したのにさ」

高校卒業後、語学留学といって、ノリコはすぐに日本を離れた。

しかし。

「……忘れられないんだけど。どうすればいい?」

「………うーん」

目は見えなくても、ノリコが真剣な目で見つめているのがわかった。

その、覚悟も。

「………あきらめなきゃ、いんじゃない?」

夏生は、タイヨウより眩しい笑顔を見せた。

「夏生………」

ノリコは思わず、夏生に抱きついた。