太陽の家

「これから、どんな未来があるかわかんないし、どんな人に出会うかだっ全然わからないよ。でも、あの気持ちを、忘れたくないんだ……」

「タイヨウ」

ユキとクモも、何も言えなくなった。



「いま……ばいっでまず」

トイレの個室のドアをノックされ、イモ子は涙声で答えた。

「やっぱ、ここにいた」

「ぎゃば……?」

どうやら、ドア越しに立っているのはキャバらしい。

「学校は、いいの?」

「ぞれどごろ、じゃない」

さすがにこんな顔では、学校へは行けない。

「タイヨウが、かわいそう?」

「うん……タイヨウが、あんな痛みを抱えてた……なんて知らなくて」

「当然だよ、向こうが言わなかったんだから」

「でも、いやぁだ」

イモ子には、キャバのように冷静には割り切れなかった。

「……イモ子」

「嫌、タイヨウ!死んじゃ…いや」

イモ子はそのまま泣き続けた。

(私は、今もユキが大好きだ。今でも、ユキとクモが仲良くしているのを見るのは辛い。二人がどんな時間を過ごしているのか、気になる。毎日、辛い。そしてタイヨウは、きっと私の何倍も辛いだろう。好きな人に、好きと伝えることも、許されなくて………)