太陽の家

冬美は黙って部屋から出て行った。

『わかってねーな……あいつ』

夏生が呟いたと同時に、部屋のドアの開く音がした。

『?』

夏生がその音に振り向くと、冬美は手のひらサイズの植木鉢を、夏生の顔の前に置いた。

『この、植木鉢に種が入ってるから』

『?』

『お兄ちゃん、毎日水やって、花咲かせて』

『何で、そんなこと……』

花なんて、育てたこともないのに。

『花が咲いたら………死んで、いいよ』

『は?』

『花が咲いてからでも、遅くはないでしょ?』


「…冬美は、あのときの俺を元気づけるために、種があるなんて、嘘ついたんだ。まあ、死んでいいって言われた時点で、俺も感づいてたけど」


イモ子は腕時計を見た。

「………ごめん、私そろそろ学校、あるから」

「…大丈夫?いける?」

「うん」

キャバはイモ子を気遣ったが、イモ子はすぐに返事をして病室から出た。

「……………っ」

イモ子は病室のドアを閉めると同時に、泣きだした。

そのまま病院のトイレに駆け込んでいった。