「まだ生きてたんだね…全く、手のかかる虫けらだよ」

冷たく私達を見下ろす。

「ロイ、逃げよう…一緒に逃げよ…?」

やっと事で口から出た言葉は自分が思ったより震えて、小さかった。

「…はっ…平気、だよ…」

私の方を見ていつもと変わらない笑みを浮かべるロイ。

どうしてそんなボロボロになってまで私を助けようとするの。
どうしてそんな、笑っていられるの。

「ダーク ネス リゼメント」

「ろ、い…ロイ…!!」

一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

ミルが何かを呟いた途端に地面から紫のような黒い物体が2匹現れてロイを銜えた。

言うなれば、龍。

ロイの右手と左手に噛み付くようにして空へ舞う2匹の龍達は容赦なくロイを襲っていく。

悶絶するような痛さを味わっているであろうロイからは叫びにも似た声をあげている。

やめて、やめて辞めて…。

「もう…やめてよ…」

涙を流しながらミルを見上げる私に彼は口元に笑を絶やさぬままパチンと指を鳴らす。

その内の1匹の龍がミルの側までやってきて地面に戻っていった。

なんなのよ、一体なんなのよ…。

口から大量の血を吐き出すロイ。
いや、口だけじゃない…至る所から流れ出す。

早く手当しないと本当に死んじゃう。

「彼らはね?血の匂いを嗅ぐとより凶暴になるんだよ」

…まるでサメだ。
そんなに嗅覚がいい動物がサメ以外にいるなんて…ううん。

こいつらは動物なんかじゃない。
魔物なんだ、平気で私達を、人を傷つける魔物だ。