自分の口を押さえて声を出さないようにする私だったけど、ロイが死んだという事実は私を動けなくするのには充分過ぎた。

ーーガサッ

隠れているという事を忘れ木に寄りかかるようにして座り込む私に草の擦れる音が響く。

「うん?そこに誰か居るのかなぁ?」

楽しく歌っているかのような声を出しながら私の方へ近付いてくる一つの足音。

ミルだ…ミルしか居ない。

足音が聞こえるってことは今度は飛んでないんだ…。

冷静な事を考えている割に、ここから動けないでいる私は相当な馬鹿なのかもしれない。

「み〜つっけた♪」

それと同時に私はハッとして顔を上げてしまう。

そこには不気味なほどニヤついているミルが私を見つめていた。

その表情に体は無意識に強ばる。

「君は殺さないよ?
僕たちのボスがそれを望んでいるからね…少し眠ってもらうだけさ♪」

私の目の前で手をかざす。
もう、私には逃げるなんて言葉は脳内から消え去っていた。