魔界姫志ーまかいきしー



逃げなきゃ。
ここから早く逃げなきゃ。

そう思うのに足が、身体が言う事を聞いてくれない。

「逃がさないよっ」

ミルが呟くと同時に悪魔のように尖った耳に、漆黒の羽が背中に生える。

人じゃない、悪魔そのものだ…。

爪も長く鋭く伸びてる。
あんなので切られたら終わりだ。

「ここは僕に任せてユイちゃんは逃げるんだ!!」

ロイが少し地面から浮いて私の前に両手を横に広げ 通せんぼするような形で立つ。

いくらロイでも無理だよ、逃げよう。

そう言いたいのに、怯えきった私は声すらも出ない。

カタカタとその場に震えることしかできない。

「ユイちゃん!!早く逃げるんだ!!」

「うるっさいなぁ」

ミルが高速でロイの前まで移動する。

その瞬間、手を振りあげる。

「ッッ…くそ…う、!!」

長く鋭い爪は見事にロイの肩へ命中し、貫通する。
ロイの肩から流れるのは赤い液体。



「ロ、ロイっ!!」