私の足首を力なく掴んだその人物は意外にもまだ意識を残したシキだった。
途切れ途切れに発するその言葉に慌てて私はしゃがみ込んで耳を近付ける。
「 は、ッ…いいか、ユイ…
あいつの動力は…恐らく、黒く淀んだ感情…だ。
お前が、あいつの言葉に惑わされ挑発に乗れば、思うつぼ… 」
咳き込み血を吐きながらでも私に訴えかけるその声に、私はハッとして考えを改める。
確かに、あいつは憎くて許せないけど…
ただの憎しみと怒りに任せて戦うのは、違う。
黒かった宝石はみるみるうちに虹色の輝きを取り戻していった。
「 —— ありがとうシキ 」
「 待て、行くな…っ、
お前一人で適う相手じゃない…だろ…?
いつもみたいに、怖いと泣き叫んで…このまま、逃げてしまえばいい…っ!! 」
相変わらずシキは口悪いし強情だけどこうやって私の事を思って考えてくれている。
「 ーううん。
私はもう逃げない。
この命をかけてでも、あなたを
あなた達を今度は私が護るから—— 」
そう笑って私は大きな悪魔に向かって突っ込んだ。
「 ユイ…もう… 」
後ろでそんなシキの声が聞こえたのを私は知らない。

