「 さて、もう一度私から直々にお前に聞いてやろう。

黒石に入る気はないか?
こんな腐った世界、私と一緒に壊してしまおう。

弱者は強者に貪り尽くされる運命なのだ。

—— 私がそうであったように。」

ゆるりと立ち上がったカナさんは一瞬で私の目の前まで来ては華奢な腕を伸ばし私に手を差し伸べる。

最後の言葉は酷く小さかったし私の耳元で囁くように告げられた。

きっと、ほかの3人には聞こえていない。

「 —— な、っ…!?
それは一体どういう…… 」

聞くより先に剣先を彼女へ向けたシキが私を制するように一歩前に出た。

「 … 仕方あるまい。
護衛の騎士がこれでは話にならぬな。

ミル、ヘヴン。
後者二人の相手はお主らに任せよう。
ベルガ…お前はシキの遊び相手でもしておけ。

ユイの相手は私がしよう。
なあに、少し世間話をしてみたいのだ。」

そう言ってパチンとカナさんが指を鳴らせばどこからともなく丸い脚のついたテーブルに背の高い椅子がこの空間の真ん中に現れた。

その周りを護るようにして薄いバリアのようなものが貼られているのが目に分かる。

世間話、そういった彼女はスタスタと踵を返してその椅子へと腰掛けた。

「 さあ、姫もあちら側へ。
ご安心なされよ。あの空間にいれば我々の攻撃など喰らいはしない。

思う存分に貴様らを弄んでやろう。」

ニヤリ。
いびつな程に口角を上げたベルガの笑みが背筋を凍らせた。