「邪魔が入ってしまったか

まあ良い。これから先必ず貴様らと会う事になろう。

その時が最期だ」

カナさんはそれだけ言い残してスッと身を翻すとベルガと共に闇夜に消えて行った。

その後は宮殿に仕える騎士と私達で大掃除の始まりだった。

崩れた天井は日を掛けて元に戻し
荒れ果てたこの場の瓦礫等を片付け
怪我人を違う部屋に移して治療し
死者の身元から親族に伝えたり、と

レイさんはルイの母親と同じ墓に眠らせるとルイから聞いた。
この国にはもう、王も姫も妃も誰も居ない

この先、彼ら騎士達はどうするのだろう
身寄りの無い騎士も中には居るらしい

そんな彼らを大切に鍛え育ててきたのはレイさんとルイの母親だ。

本当はレイさんも優しい。

レイさんが亡くなった事を誰1人としてルイを責めなかった。

それよりも皆がルイに王様になって欲しいとまで頼み出したのだ。

最後の血筋として。

それなのにルイは「まだ旅を続けたいので全てが終わったら戻ってきます」だとか言って あっさりと断ってた。

全てが終わってしまったら
私はどうなるんだろう。

ここで私が死んだら元の世界へ戻れるのだろうか?

極力考えないようにしてたけど いざ考えてみたら怖い。

私が死んでもこの世界は廻る。
それは分かってるんだけど
私が死んだら元の世界へ帰れないんじゃないか。

そうだとしたら 私は本当の意味でカナさん達に負けられなくなる。

「ユイ、不安になるな
何があっても俺達が護ってやる」


私の頭を数回撫でて安心させてくれる。

…何時からシキは私の事名前で呼ぶんだろう?

前までずっとカメ女だとか鈍間だとか暴言ばかりだったのに。

「…ありがとう、シキ」

ぺチン、と私は自分の両頬を叩くようにして挟む。
少しでも自分に気合を入れるためだ。