「落ち着け番犬共。
私は今お前達と戦う気はない。

一先ずお前達と顔合わせをしておこうと思っただけだ。
そう、早まるな。次に会った時は…殺してくれる。

私の名はベルガだ、覚えておけ」

それだけ言って彼女、もといベルガは颯爽と森の中を飛ぶようにして駆けていった。

…一体、何だったんだろう。

「チッ、逃げられたか」

「シキ…駄目ですよ、今は何も起きていません。…勝負は次のようですから」

「ああ…分かってる」

不機嫌そうに鼻で笑ったシキに私は思わず目を逸らした。

…だって、シキの顔が怖かったから。

今すぐにでもベルガって人を追い掛けて殺す勢いだった。

シキに、シキ達にこれ以上手を汚して欲しくないと思う反面で

私を黒石から護って欲しいとも思ってしまう。

この感覚はなんだろう。
私は、どうすればいいんだろう。

…考えても仕方ないのに。

私はベルガと呼ばれた人が立ち去った方を向く。
そこにはもう誰も居なくて。


ただ、真っ暗な世界が永遠と続いているだけだった。