魔界姫志ーまかいきしー



どれほど時間が経ったのだろうか。

いや、実際にはそんなに時間なんて掛かっていない。

剣の交わる音は消え、先程の柄の悪そうな男の声も聞こえなかった。

残されたのは、私とロイと、二人の男。

逃げたい。

今すぐ逃げ出してしまいたい。

でも、足が、体が…動かない。

力を振り絞って一歩踏み出そうとした瞬間に一人の男が言った。

「動くな。動けば、俺達に背を向ければ今すぐお前を斬るぞ」

と。


終わった…動いても動かなくても私はこの人たちに殺される。

ゴクリと生唾を飲んでゆっくりと後ろを向く。

斬れ味の良さそうな剣の先端が私に向けられ、冷酷な瞳で私を見下ろす男二人に私は声も上げれず、眼も逸らせなかった。