魔界姫志ーまかいきしー



『主よ、我の力を開放するが良い』

ふと そんな杖の声が聞こえた。

…杖の力を開放するって…?

必死に頭を回転させるけど思い当たる台詞も行動も何一つない。

そう思っていた筈なのに…。

「緑深き炎よ。
汝の力を我等に授け我等に一筋の道を」

また…私の口が勝手に開く。
皆は私をただ見つめているだけで誰一人話そうとしない。

まるで、それが暗黙のルールだったかのように。

《其方の願い…聞き届けましたわ》

私だけに聞こえるこの声。
これが、この結晶の声なんだ…。

何も分からない私だけど この事は自然とそう思える。
私のやるべき事が何なのか。

分からなかったけど…今ようやく分かった気がする…。

結晶の声が聞こえた瞬間、広間に強風が吹き荒れる。

洞窟の中にも関わらず沢山の葉がユエを囲うように くるくると回っている。

「ユエ!!」