「ぎりぎり……」

「お前のせいだかんな」

「わかってるって」



遅刻寸前で学校に到着した俺たちは
HRを終えグッタリとしていた。




「俺のおかげで遅刻せずに済んだんだ。
 お前なんかおごれよ」



曽田は一瞬むっとしたものの
ため息をつきながら了承する。



「わーったよ
 飲み物でも買ってくるわ。」

「コーヒーな」

「へいへい」



曽田はダルそうな足取りで
教室を出る。


俺はそれを見送りつつ
今朝の出来事を思い返す。






朝の混む時間帯
車両から溢れかえる人、人、人



いつもと変わらない朝
いつもと違うホーム



段々と集まる人
避けられた中心
倒れている老人






そこで俺が見たのは
人だかりから慌てた様子で飛び出す
高校生3人組だった。


老人が倒れた原因は
おそらくあの三人組。


そしてこれも推測だが
周りの人たちが言っていた
『高校生』というのは
曽田じゃなくあの高校生だろう。





「はあ…」



今日何度目かわからないため息が
思わずこぼれ落ちる。




曽田は昔から面倒ごとに巻き込まれる。


そう、『巻き込まれる』だけだ。






小学5年のときの
クラスの女子の靴が隠されたときも

隠されたというのは勘違いで
出席番号が前後だった曽田の靴箱に
その女子が入れ間違えただけのこと。

しかしそれを言い出せなかったその子は
そのまま曽田のせいにしてしまった。




小学6年のとき
近所で強盗がでたときだって
商品を取り返そうと思ったのか
犯人から盗んだものを奪ったものの
調子に乗って「取ったどー!」なんて叫ぶから、店の人から泥棒扱いを受けた。




中学にあがったときのは事故だし
卒業前のは眠っていただけの猫を
死んだと勘違いしただけ。





曽田が不幸体質だと思っている
巻き込まれた数々の事件は
たくさんの偶然や
曽田の勘違いから生まれたものだ。



つまり、曽田は馬鹿なのだ。

そして思い込みが激しい。





そんな幼なじみに
俺は長い間悩まされている。






「はあ…」






もう一度ため息をついて、
帰りの遅い曽田がまた
何かに巻き込まれているんじゃないかと
半ば憂鬱な気分になりながら
ゆっくり立ち上がり教室を出た。