〜榎本side〜







「はあ…」




今は朝の7時40分
いつも通り電車に乗って
駅についたところだ。




「まぁ、そうだよな」



朝から俺が頭を抱える理由
それは目の前にある人だかりだ。



「ちょっとすいませーん」



軽く頭を下げながら
人ごみをかき分けて中心へ。


すると予想通り
見覚えのある後ろ姿が。





「…おい」



声をかけても反応がない。

きっとパニックで
頭が真っ白なんだろう。



「おい曽田!!」




大きな声を出すと
ようやくそいつは振り向く。




「榎本…」



曽田は目を見開いて
こっちをみているものの
そこから動く気配はない。


だんだんイライラが募る。




「なにしてんだ早く行くぞ!!」

「え、でもじーさん…」



急かしてもなお
そこを動こうとしない曽田に
イライラがMAXに達し
強引に腕をつかむ。




「いいから来い!!」




それから人ごみをかき分け
駅内をずんずん進む。


そこまでしても
まだ気にしている様子の曽田に
救急車を呼んだと伝えると
ほんの少しだが安心した表情になる。





「でも俺疑われてたっぽいけど?」

「お前なんもしてねーんだろ?
 だったらいいじゃねーか。」

「そりゃそうだけどさ…」

「でもとかだけどとかうっせんだよ!
 いいっつってんだからいいだろ!」




いつまでもうじうじと気にする曽田に
我慢ならず大声で怒鳴る。



顔を引きつらせながら
渋々といった様子で納得する曽田。






こいつは昔からこんなやつだ。

うじうじと情けなく
いつも面倒ごとに巻き込まれては
何も出来ず狼狽えるばかり。

まぁこんなやつでも
いいところはあるんだが。




しかし、ひとつだけ
昔から本当に悩まされている
この不幸体質……



















本当は不幸体質なんかじゃない