次の日の夜もまた私達のトークメールでの会話は続いていた。

今度一緒に近くのプールに行こうなどと約束をしたり、近々行われる学校行事の球技大会で応援するなどと沢山の話をした。

でも、私は本当に本谷君の事が好きなのだろうか。
自分の気持ちが良くわかっていない。

そんな複雑な思考は私を余計にモヤモヤとした気持ちにさせる。

「ちょっと本谷君の事引っ掛けてみようかな?」

気分を変えてみようと本谷君をからかってみる事にした。

"好きです、"

そう文字を打ち、送信した。

少女漫画に《好きです、佐藤くん》というタイトルの漫画があったのを思い出したのだ。

好きです、と送った後に本谷君の反応を見て楽しみ、ネタばらしする。
という計画を立てていたのだが…。

"まじで?"

こんなに真面目に返ってくるとは予想していなかった。

私は何と返していいかわからなくなってしまった。

でも返さないのも悪いので、考えていた計画を本谷君に言い、ネタばらしをした。

"めっちゃびっくりした!"

"ごめんごめん!でも、もしそれが本気だったらどうしてた?"

何となく気になって聞いてみる事に。

"俺と付き合って?って言ってた。"

「え………?」

本谷君には彼女が居る筈だ。

"彩也、俺と付き合ってくんないかな?"

"でも、本谷君には彼女居るんだよね?"

"彩也が二股でもいいなら。"

「二股…二股って……。」

二股。
要するに浮気や不倫のようなものだ。

そんなのいけない事とわかっている。
けれど私はその考えを押し殺してしまった。

何故なら、前好きだった人をどうしても忘れたかった。
それに、ずっと居なかった彼氏が欲しかった。

本谷君の事が好きかも知れない。
そんな気持ちも何処かにあった。

だから私はこう返した。

"うち……本谷君と付き合いたい。"

"その代わり俺ら付き合ってる事は内緒ね?"

"わかってるよ。うちこう見えて演技上手いんだから!"

12月8日。
2歳年下の彼氏が出来た。
絶対秘密という条件付きの彼氏が……。