次の日の朝。
いつもと変わりなく、なっちゃんの乗っているバスに乗り込んだ。

「えぇぇぇぇぇ!?本谷と付き合い始めたぁぁぁ!?」

「シーっ!なっちゃんバスの中だよ…。」

「あ、ごめんごめん。でもさ、本谷って彼女いるって彩也言ってなかったっけ?」

「うん。要するに悟志はうちとその彼女さんと二股してるの。」

昨日の夜、名前で呼んでと言われた為に、本谷君から悟志に呼び方が変わった。

その時じわりと心の奥で熱くなった気がした。
凄く嬉しかった。

嬉しくてその事が頭から離れない。

「ちょっと彩也聞いてる?」

「あ、ごめん。聞いてなかった。」

「……口緩んでたよ。」

「えっ!?」

「本谷と恋人になれて嬉しいとかって喜んでるのも良いけど…………彩也、やめといたほうがいいよ。絶対後悔する。」

悟志に交際の返事を返す前に思ったが捨ててしまったこの考えをなっちゃんの口から聞かされる。

「彩也は本谷の事好きなの?」

究極の質問が遂に来てしまった。

ずっとここ3日間気になって悩んでいた内容が……。

「本気で好きではないと思う。」

そう、私は悟志への気持ちが恋愛感情なのか、好きなのかわからないのにOKを出した。

こんなのただのノリで付き合ったに過ぎない。

「それじゃあ本谷が可哀想じゃん?」

悟志の気持ちを考えてなかった。

暫く悩んでいるとバスが駅に着いた。

「なっちゃん。この事なんだけど、他の人には黙ってて貰えないかな?」

「わかってるよ。大丈夫。」

バスを降り、なっちゃんと並んで階段を昇る。

ーピロロリン♪ー

"はよ!"

悟志から来た様だ。

"はよー!もうバス停に居るの?"

"もう居るよ。彩也は?"

ーピロロリン♪ー

悟志への返事の文を打っている時に誰かからトークメールが入った。

もうすぐ着くと悟志に返事を送り、そちらのトーク画面を開く。

"おはよ!今日も寒いね!"

文化祭の時に知り合った、同じ高校の1歳下の後輩。
吉田冬真(よしだ とうま)からだった。