ソファーに座ると、奎が話を切り出す。

「で……相手は誰なの?」

「同じクラスの…蓮」

「蓮!?蓮って、あの蓮だよな?彼女と付き合ってもうすぐで一年になるってうちのクラスでも結構騒がれてるぞ」

奎と蓮の彼女は同じクラスだ。うちの学校で、こんなに長く続いてるカップルは珍しいから、噂になってるらしい。

「そうだよね…」

「蓮たち、結構ラブラブだからな……休み時間とかも、会いに来たりしてるし」

ずきっと胸が痛んだ。

私も、時々見かけたりしてた。

「そ……だよね」

「あ…ごめんな」

「ううん、大丈夫だよ」

誰に相談しても驚かれるとはわかっていたけど、やっぱり辛い。

だから、その中でも一番わかってくれそうな奎に相談することにしたんだ。

私は、台所に向かい、ココアを淹れた。昔から、私と奎の、大好きな飲み物だ。

「……まぁ、誰を好きになろうとその人の自由だもんな。俺はいいと思うよ」

「えっ?ほんと?」

びっくりして、マグカップを落としそうになってしまった。

「おう。好きになる気持ちは止められないし、俺も今そんな感じだから…」

と、奎は悲しそうで儚い表情で言った。

あまりにその表情が切ないから、気になって、

「奎も私と同じような恋してるの?」

と聞いた。すると、奎は少し迷って

「んまぁ…そんなとこかな」

と、寂しそうに笑った。

奎も辛い恋をしてたんだ。

「そっかぁー…お互い大変だね……」

「……そーだな」

同じような恋をしているとわかると、なんだかすごく親近感が湧いた。

「これからも、相談していいかな?」

「もち!」

やった!奎に相談できるなら、怖いものなんてない。

でも、一つだけ気になることが。

「私、奎の好きな人聞いてない!教えて?」

ここまで来たら、お互いに相談に乗ったほうがいいよね。

「俺の好きな人は……まだ秘密」

「えぇーなんでー」

「なんでも!」

「私は教えたのにぃ…」

「それはそれ、これはこれ!」

奎はケチだなぁと呆れつつも、人それぞれ言いたくないこともあるだろうと、深く追求はしなかった。

「いつか絶対教えてよね?」

「わかった。じゃあ、叶ったら教える」

「早く叶うといいね!」

「なんかさっきより応援に力入ってないかー?」

「そ、そんなことないよっ」

「ならいい」

「うん!よし!この話おしまい!ご飯食べよ!」

「おう」

「今日はハンバーグ〜♪」

「お、よっしゃ」

ガッツポーズをとってる奎。

夕飯がハンバーグの時は奎がなにか嬉しいことをしてくれたとき。

まぁ、奎は気づいてないんだろうけど。