「ねぇ、蓮。」

「んー?」

私の悩みも露知らず間抜けで眠そうな返事をする蓮。

それでも、ここは聞かなきゃ前に進めない。

「好きになっちゃいけない人を好きになったら、どーする?」

蓮はどんな返事を返すんだろう。

「………好きになっちゃいけない人?……例えば?」

例えを求められると答えづらい。

「うーんと…彼女がいる人とかかな?」

これだとばれちゃうかな。ドキドキしてきた。

「そーだなぁ………俺だったら待つかな」

少し悩んで答えると意外な答えを出した。

「待つ?」

「うん。その人たちが別れて、俺にチャンスが巡ってくるまで待つかな」

「チャンスが巡ってくるまでか……」

わかりやすい。ちょっと関心。正直、馬鹿にされると思っていたので、こんな答えをくれるとは思わなかった。

「まぁ……別れればいいとかは思わないけどな」

「なるほどねー。ありがとう」

「おう。じゃ、俺部活行くわー」

「バイバーイ」

チャンスが巡ってくるまで。それがいつになるのか、わからない。

でも、このままじゃ何もできないし、やっぱり本人に聞いて正解だった。

このまま悩むより、この先どうするか、はっきりしてたほうがいい。

「でも待つっていってもな〜」

はっきり言うと待てる自信がない。

蓮達はすごくラブラブだし、校内でも少し有名。

別れる気配なんてさらさらない。

「何を待つの?」

いきなり後ろから声が聞こえる。

「…え!?」

今の…聞かれた?

恐る恐る顔を上げると、そこには親友の石井涼菜がいた。

涼菜は天然でマイペースなふんわり系女子。

でも一緒にいるだけで笑わせてくれて楽しい。

聞かれてたのが涼菜でよかった。

多分、びっくりするくらい鈍感だから、わからないだろう。

「ちょっとね〜」

安心した私はからかうように笑った。

「えー教えてよー」

上目遣いで見てくる涼菜。

すごく可愛い。

自分では気づいてないみたいだけど、涼菜は学校でも可愛いと有名で人気がある。

その天然な性格も男子にはツボらしい。

「今はまだ秘密〜」

その可愛さに打ち明けてもいいかなと迷ったけど、まだこの恋は秘密。

きっと、知ったら大騒ぎするから。

「ちぇっ……」

口を尖らせて拗ねている涼菜。

茶髪のツインテールが揺れる。

こんな表情もすごく可愛い。

「今度涼菜が好きなパンケーキおごってあげるから」

好みも女の子っぽくて。

何度涼菜になりたいと思ったことか。

「ほんと!?やったぁー♡」

満面の笑みではしゃいでる。

その姿は天使と言ってもいい。

女の私まで惚れてしまいそう。