ー美歌sideー

「おーい!美歌!」

夢の中で誰かが呼んでる。

誰だろう。なんだか懐かしい声。

私、この声知ってる。

世界で一番大好きな声。

「美歌ってば!起きろ!」

「えっ…ふぁい!!」

一際大きな声にびっくりして目を覚ました私は、授業中かと勘違いして大きく返事をしてしまった。

一斉にみんなの注目を浴びる。…恥ずかしい。

「もー、もっと優しく起こしてよ」

「お前、起きねぇんだもん」

「ごめんごめん。夢見てた」

「どんな夢?」

「んー、忘れちゃった」

なんだかとても心地がいい夢だった。けど、思い出せない。

「ま、思い出したら教えろよな」

「しょーがないなー」

私は吉田美歌。中学二年生。

現在、目の前の男子に片思い中。

私が好きなこいつは、藤井蓮。

かっこよくて、笑顔が爽やかで頭がよくて運動神経抜群。

まさに私の理想の男子。

でも、蓮には彼女がいる。

優しくて頭が良くて美人で運動神経抜群。

蓮とすごくお似合いな彼女。

私は、平凡で頭もそんなに良くないし、完全に負けてる。

だから私なんて絶対に好きになってくれるはずない。

わかってた。

それなのに私は蓮を好きになってしまったんだ。