その瞬間どよっと周りがざわめく
体制を崩した斎藤の上半身を斬ろうとした
──ダンッ
しかし、華蓮が振り下ろす一歩手前で、斎藤の竹刀は華蓮の腰に当たっていた
え───────?
今の動きは何─────?
速すぎて見えなかった
「そこまで、勝者、斎藤!!」
永倉が手を上げ、大きな声で言うと、華蓮と斎藤のもとに駆け寄る
「危なかったな、斎藤」
危なかった────?
少なくとも華蓮には、斎藤を圧しているようには思えなかった
斎藤は、竹刀を下ろし、一息つく
「あの一撃はなかなかきつかった
湊上、一つ聞いていいか?」
「は、はい……何でしょうか?」
無口な斎藤が口を開いたこともあり、緊張して姿勢を正した
「お前は竹刀の柄で俺の腹部を突いたが…………どうして、竹刀の先ではなく、柄で攻めたのだ?
先であれば、一本取れたかもしれないのだぞ?」