「華蓮、これをやるぜよ!!」
坂本は買ってきた団子を差し出す
「ありがとうございます
あの……だから、蓮と呼んで欲しいんですけど」
「細かいことはいいんじゃ!!
おまんの本当の名は湊華蓮じゃろ?
呼んで悪いことなどないに」
あのあと、華蓮は結局寺田屋に泊まり、自分の身の上話を坂本と中岡に打ち明けた
中岡は心底疑り深く、未だに信じているのか怪しかったが、坂本は華蓮の話す未来の話に興味を示していた
外に出歩いて新撰組に見つかったらまずい、ということになり、まだ華蓮は寺田屋にいる
「おまんの成すべきこと、か……」
「私にもよくわからないんです
ただ、人を殺したりすることは嫌です
芹沢さんの時みたいに仲間を殺すのはごもっともだけど………
私たちだって同じ人間なのに、人の命を奪っていい権利なんてないです」
と、言いつつ華蓮も人の命を奪ったうちの一人なのだ
「それはただの甘ったれた考えだな」
「中岡さん……」
中岡は思ったことをハッキリと言う人だ
短い間でもそれはよくわかっていた
「そうだとは思います
だけど、私がいた時代は簡単に人の命を奪ったりしないんです」
みんながみんな幸せ、とは言えないけど殺される恐怖に毎日怯えたりすることはまずない
「それでいいぜよ」
坂本が急に真面目な顔になる
「おまんのいた時代、というのはわしが理想としとるモンじゃき
今、日本人同士で争っても意味がない
わしが、この国を変えてみせるぜよ!!」
その顔は自信に溢れていた
──これが、坂本龍馬
華蓮は不思議な魅力を感じていた
「華蓮、それでな────────」
その後、華蓮はもう一日坂本たちと過ごし、屯所へ返してもらうこととなった