クリームがダメなら和菓子はどう? と甘味処を探したものの、デパ地下のたい焼き売り場ぐらいしか見当たらなかった。

私はそれで十分なのだが。彼はどこか不満そうにしながらも、渋々了承した。


食品街の一角にある休憩用のベンチでたい焼きを頬張りながら

「美味しいです」という私に

「それはよかった」と彼は少し複雑な表情で微笑む。


大城さんはたい焼きを尻尾まで口に入れると、包み紙をクシャっと丸めながら呟いた。

「ずいぶん安上がりなデートになっちゃったなぁ。
今度リベンジさせてください」

「や、そんな……」

デートではないし、次もきっと無い。

単に仕事終わりに少し寄り道しただけなのに。

リアクションに困るようなことを言わないで欲しい。