「上の階にパンケーキ屋さんがあるよ。パンケーキ好き?」

大城さんが、エレベーターの横に貼ってあるフロアガイドを見ながら、私に尋ねた。

「あの、甘いものはちょっと……」

私が断ると、彼は不思議そうに首を傾げる。

「ダイエット中?」

「いえ、甘いものが得意ではなくて。
クリームとかムースとか、トロッとしたものを食べると、気持ち悪くなるというか」


女の子がみんな生クリームやチョコレートが好きだと思ったら大間違いだ。

私の反応が意外だったのか、せっかくの端正な笑顔が驚きで崩れる。


「君はなかなか掴みづらい子だね」

残念ながら、よく言われる。


「……酒の方がいいかな?」

「まだ一応勤務時間中です」

彼は困ったように頬を掻いた。