黒色女子を個人授業

「私の買い物はもういいですから!」

私は売り場に背を向けて、彼――大城さんを店の外へと促した。

「え? 買わないの?」

スタスタと出口へ向かう私を追いかけながら、大城さんは残念そうに私の顔を覗き込む。

「そもそも大城さんは何を買いにきたんですか?」

「いや、君の財布があまりにボロボロだったから」

「え!? 私の財布!?」

わざわざ他人の財布を買うためにデパートへ寄ろうなんて言い出したのか?


「天野さん、残業忙しいし、ゆっくり買い物する暇もないでしょ?
きっかけがあった方がいいと思って」

そんなことを考えていたのかこの人は。余計なお世話というか、何というか。

そこに気を使うくらいなら、もっと仕事量を減らすとか、上司らしいことをして欲しい。