黒色女子を個人授業

私たちは駅を出ると、ひと気のない暗い住宅街を歩いた。

ところどころにある鬱蒼とした空き地や公園が物騒で、不安感をかきたてる。

でも今日は心強い。


「来週の土曜日、子どもの幼稚園の運動会なんだよ」

「出張の翌日ですか?」

「ああ。朝早いから、急いで帰らないと」


子どもの話をするときの幸せそうな彼が好きだ。


彼は奥さんのこともよく語ってくれるけど、それを嫌だなんて思わない。

独身の私にとって、愛妻家である彼は一層素敵に見えた。

結婚は幸せなものではないと先人――主に姉だが――から教え込まれていた私には

結婚してからも幸せそうな彼を見るのが、ある種の希望でもあった。


だからいっそ、私のことなんて相手にしてくれなければいいと思う。

私に本命の彼ができるまでの少しの間

独りよがりの憧れを、恋と呼んで楽しんでいるだけなんだから。