時計の針がまたひとつ時間を刻んでもう夜の10時。
「お前、張り切るのはいいが、残業もそこそこにしろよ」
今にも帰ろうと荷物を抱えた今井さんが、ぶっきらぼうに声をかけてきた。
「もうちょっとなので」
私が苦笑いで顔を上げると、正面で帰り支度を整えている花が根をあげた。
「ダメですよ、この子。
仕事してないと落ち着かないんですって」
「お前、それ1年前から言ってるぞ?」
今井さんは呆れたようにため息をつく。
「確かにあのときはいろいろあったが……
そろそろ他のことに目を向けたらどうだ?」
「……なんのことですか?」
私はとぼける。
すると今井さんは頭を抱えて「ごまかし方がだんだんあいつに似てきた」と小さく呟いた。



