朝のバスはきゅうきゅうに混んでいる。


翔琉は無意識なのかもしれないけど、あたしをちょっと庇うように立つ。


「……これってさー、結実ちゃんだったら完全に溺れてるよな」


吐息が掛かりそうなくらい近くにいるのに、あんたの気持ちはお姉ちゃんに向かっているのね。


あたしはちょっとドキドキしているのに、あんたは平常心なわけね。


いちいち、そんなことを思い知らされる。


思いの外、その現実はダメージが大きくて……


あたしは、クリスマスの希美の企みを翔琉に打ち明けることが出来なくて、ただただ、ぎゅうづめのバスに揺られているしか出来なくて。